第5回 学術ソリューションセミナー 2009 in 大阪 「学術情報の現在と未来」
2009年6月24日(水)@ヒルトンプラザウェスト8Fカンファレンスルーム
サンメディア社主催の第5回 学術ソリューションセミナーに参加してきました。
出版社、出版関係者、図書館関係者などが参加する盛りだくさんな内容でした。ひとつひとつに対して、記録をすると冗長な内容になりますが、頑張ってまとめていきます。
第一部:講演とアップデートセッション
講演「世界の電子リソース管理の最先端と最新の技術アップデート」
Serials Solutions Richard Levy氏(Library Solutions Specialist)
セッション「RefWorks & e-PortUpDate RefWorks」
須田佐知子氏、サンメディア e-Port
第二部:メイン企画 パネルディスカッション
第三部:学術アップデート
IOP Publishing 小山内正明(IOPP東京事務所)
株式会社カルガージャパン 村西洋三氏(セールスプロモーション)
NPG ネイチャー アジア・パシフィック 遠藤昌克氏(オンラインセールス)
オックスフォード大学出版局株式会社 大池一則氏(オックスフォード・ジャーナル)
Thieme&RSC Publishing 細谷愛子氏(ビューロー ホソヤ)
第一部:講演とアップデートセッション
まず、図書館に対して電子リソースを管理、提供していくためのツールをSerials SolutionsのRichard Levy氏に紹介していただきました。リチャード氏いわく、図書館に情報があることは知られているにも関わらず、検索が困難であるがゆえ、ユーザーが寄り付きにくいという問題点を抱えているといいます。検索を「simple」「easy」「fast」にするためのツールとして、
- 360Core(A-to-Zリスト)
- 360Link(リンクリゾルバ)
- 360Search(横断検索)
- 360Resource Manager(ERMS)
- 360Counter(統計)
- 360MARC Updates(MARC管理)
- Summon*1(次世代OPAC)
これらの根底にはすべて、Serials Solutionsのナレッジベースに基づいているそうです。ASP型のサービスであるので、図書館側のアップデートが必要ないので時間とお金をsaveできるという点を強調されていたように思います。managementはお任せください、図書館はローカルデータの整備と提供に特化してください、という趣旨だったように理解しました。また、出版社と強い連携を持っているため、KBに商業出版社からのメタデータをハーべスティングできる*2こともSerials Solutionsの特徴だと思います。
個人的にはERMSに興味がありましたので、360Resource Managerについてもう少し聞きたかったですが、ERMSのコレクションやライセンスをシェアする事例は興味深かったです。
次にProQuestのRefWorks-COSとCSA Illustrataの紹介でした。
- RefWorks-COSは「学術情報・研究結果の収集と管理、共有・発信、論文執筆を支援するウェブサービス」
- 活用法としてYale Universityでの利用法、Cleveland Clinicの利用例(年代ごとに)
- 2009年も添付ファイルの検索、検索結果の保存、モバイルでの活用
- teitterなどでも展開中
- 後半は研究者支援をCOS製品の紹介
- CSA Illustrataは画像データを検索対象にしている
- Deep Indexingとう索引により検索が可能に
- 検索結果にサムネイルを表示
- Natural SienceとTechnologyを収録
- PierOnlineの紹介
- 国内の医学・看護系雑誌を提供
- 1誌ごとの契約
第二部:メイン企画 パネルディスカッション
4名の方の自己紹介を兼ねたプレゼンのあと、ディスカッションが行われました。
パネラーの方の発表をかいつまんで記します。
- ProQuest
- NPO医学中央雑誌刊行会
- 国内医学雑誌のデータベース(全文リンクとOPAC、リンクリゾルバへリンク)
- 利用者層により求められるが異なる段階に入りつつある
- 今やるべきことは、利用者調査
- 医中誌のユーザー分析の結果、専門分野以外のことを概括的に知りたいときが多い(症例報告は重要)
- 今後の展開
- 大学図書館のトータルサービスにおいて、「パーツ化」と小規模な施設においてはトータルサービスとしてふるまえる「ポータル化」を目指す
- パーソナライズ(大学図書館のIDなどとの連携)、アーカイブ(創刊号から1982年までの画像ファイル化とネットでの提供)、一般への情報提供
- 次世代OPACの話から連携の枠組みへの期待
- 次世代OPACの可能性―その特徴と導入への課題―やごぞんじですか?次世代OPACなどを参考
- 複数機関で標準化を目指すとしたら、パッケージの標準化から可能性を探れないか
- 10年後、比重はWebでのユーザナビゲーション、サービス業的発想、周辺の知識やノウハウなどに移っているのではないか
宇陀氏(筑波大学)からの問題提起:
10年後、図書館の予算が半額になったらどうしますか?
- 図書館内の当たり前は、外には通じない
- 図書館システムひとつにしても大学全体のシステムの一部にすぎないので、予算獲得のためにアピールを出版社やベンダーできる可能性はあるのか。
小島氏(ProQuest):
- 出版社の立場として、図書館をとび越えて大学(予算をもっている部署)にアピールしても、図書館の役割を低めるだけになってしまうのではないか。
久保山氏(大阪大学):
- 図書館の外では、図書館システムが他より優位に立っているわけではない
- コンテンツ予算を全額予算にするのは、困難であるがその可能性を探れないか
- 関係者へのアピール(ラーニングコモンズも図書館のインフラアピールにもなる)
宇陀氏:
- 図書館のサービスに学部生がそれほど期待していない(?!)
- しかし、予算が削減されて影響をうけるのは利用者であるが、その利用者を図書館員は見ているのか
松田氏(医学中央雑誌刊行会):
- (プレゼンで「利用者をみる」ことの重要性を強調されたことを受けて)Web時代を迎えて、エンドユーザーが主な利用者になったが、エンドユーザーが使用しなければ、作っただけでは意味がない
宇陀氏:
- 利用者を知るために、来館者にアンケートだけでなく、「図書館いらない」とおもっている利用者(になる可能性がある人)に目を向けないといけない
- それでも予算が獲得できなければ、システム予算を削るべき(?!)
- システムカスタマイズにかさみすぎる、競争入札を好まない
久保山氏:
- カスタマイズ予算を削減できたとして、あまった予算で何ができるかと考えなければできない
- 業務を圧縮しないといけないが余剰の使い方
宇陀氏:
- すべてのがオープンソースにしたらベンダー(出版社)は困りますか?
小島氏:
- 困ります
- ただ、すべてがオープンソース化されるとは技術、人員、時間の点から考えにくいので、それ以外のところにベンダーの役割がある
宇陀氏:
- オープンソースを選択せざるを得ない大学もあるかもしれない
松田氏:
- 医中誌としてはオープンソースは歓迎する
(ここでフロアから)
薬品会社の方:
- 図書部門にきて半年だが、アピールにデータ(数値)が少ない。実績をもっとオープンにしてほしい
宇陀氏:
- 図書館の中の人は危機感が足りない
- ベンダーや出版社の方はほかの図書館を回っている情報(ノウハウ)をフィードバックしてほしい
小島氏:
- 他機関の利用実績は個人情報や期間ごとの特徴の点から公開が難しいが、買い方のヒントは提供できる
印刷会社の方:
久保山氏:
- マネジメント、技術の面からアプローチは可能(システムをモジュール化)
国立大学法人図書館員の方:
- 変化の機運はある
- システムのリプレイスにおいて利用者の提供へ重点がおかれつつある(⇔高額システム)
第三部:学術アップデート
さまざまな出版社より今後の動向、新しい情報を提供していただきました。
- IOP Publishing
- 英国物理学会出版局の電子ジャーナル
- 2010年EJonlyの価格を導入(2009年print+ejと同等、つまり来年以降はprintは上乗せ)
- パッケージの導入
- オープンアクセスジャーナルの追加
- 株式会社カルガージャパン
- 医学系の出版社
- 病院図書館向け(大学図書館は除く)のコレクションの紹介
- NPGネイチャー アジア・パシフィック
- オックスフォード大学出版局株式会社
- journalとオンラインコンテンツの紹介
- journalのパッケージ購入とアーカイブについて
- Thieme&RSC Publishing
- Science of Synthesisの紹介
- RSC Publishingの電子ジャーナルの紹介、RSC Prospectと呼ばれる新機能の説明(構造式から論文を検索できる)
ここまで、書いておいて言うのも何ですが、あきらかに後半はばてております。
ディスカッションで力を割きすぎまして、尻すぼみな報告ですが、それぞれのコンテンツについておいおいカバーしていこうと思います。
感想…は一言では言いにくほどのボリュームたっぷりな一日でした。セミナーを開催していただいたサンメディアさんに感謝です。ただ、費用にみあう効果(結果)について強く意識する一日だでした。目のつけどころとして適切かはわかりませんが、出版社、ベンダー、図書館いずれにも当てはまるような気がしました。
意識がボーっとしておりますので、本日はここまで。
*3