klarer-himmel13's diary

(旧)図書館の中では走らないでください!から

図書館システム勉強用―その2「次世代目録情報サービスの在り方について(最終報告)」後篇

諸事情で、2のシステムを飛ばしまして、3運用を先にまとめていきます。「図書館システム」勉強用ですけど。

3運用:体制の抜本的見直しに向けて

3.1 NACSIS-CAT外に存在する書誌データの活用

1.認識されている問題点

  • 書誌レコード入力における作業負担の軽減化
    • NACSIS-CATは商用MARCや各国の全国書誌作成機関による集中目録作業の結果を参照ファイルという形で利用可能にし、分担目録作業を支援するための基盤としてきた。しかし、書誌データの電子的作成が一般化している中で、書誌データの出版社や図書館等における作業が重複し、目録作業の効率化が課題となっている。
  • 目録の質を犠牲にすることのない作業の軽減化
    • 1995年以降に出版された和図書(日本語本文)のうち、件名付与は67.32%、分類付与は78.18%である。一方、同図書のBSH(Basic Subject Headings)の付与率は49.41%、NDLSH(National Diet Library Subject Headings)の付与率は23.03%
    • また、重複書誌や雑誌所蔵の未更新は目録の品質低下を招いている。「書誌ユーティリティ課題検討プロジェクト中間報告」によると、平成15年度の書誌削除率7.3%、未更新率31.5%、ILL謝絶率15.5%*1

2.方向性と検討問題
1.出版取次データのさらなる活用

  • オフライン(バッチローディング)登録が可能と思われる書誌の割合
    • 「ISBNあり、書誌構造なし」のものの割合は46.3%(553件)
    • 上記のうち、538件は形式的には利用可能と考えられる
  • 新規書誌作成時におけるTRCMARCからの流用率
    • 2008年2月16日業務終了時の総合目録と参照ファイルとして利用しているTRCMARCの基となっているTRCデイリーマークを調査した結果、約45%
    • 2005年以降、流用率が上昇している
  • TRCMARC活用可能率
    • TRCデイリーマーク1週間分(2009 年9月7日-13日1,195件)に対して、NACSIS-CATで作成されている書誌の割合は、2008年2月の時点で約63%(749件)

以上の結果より
1) 総合目録データベースにおいて新規に作成される日本語資料の書誌レコードのうち、約半数はTRCMARCからの流用
2) TRCデイリーマークに含まれる書誌レコードのうち、書誌構造がないものは半数程度。残りの半数は人手による何らかの修正を加える必要がある
3) TRCデイリーマーク1週間分に含まれる資料のうち、約60%は出版後5ヶ月以内にNACSIS-CATの書誌レコードが作成される。1年以内では約80%。
4) 1)と2)より、総合目録データベースにおいて新規登録される日本語資料の書誌レコードの25%程度はTRCMARCの書誌レコードに構造的な修正を加えることなく、流用されている
5) 2)と3)より、TRCデイリーマークに含まれる書誌レコードの30-40%は構造的な修正を加えず総合録データベースに追加可能、かつ、いずれかの参加館の所蔵レコードが作成される

2.品質向上のための方策の検討

  • 全体についての標本調査
    • 総合目録データベースの中の分類や件名を持たない書誌レコードのうち、およそ10%については参照MARC中のレコードとISBNで対照することで、分類や件名の追加が可能
    • 外国語資料については特にその効果が高いように思われる
    • ただし、参照MARC間での重複ヒットへの対処をルール化する必要がある
  • 最近作成された和図書の書誌レコードのについての調査

3.今後の課題

  • 洋図書におけるNACSIS-CAT外の書誌データのさらなる活用の可能性調査
  • 品質向上のための方策の検討
3.2 共同分担方式の最適化に向けた見直し

1.認識されている問題点

  • 重複書誌レコードによる品質の低下
  • 参加機関の「二極化」*2
  • 資料の共同利用を促進していくための運用基盤の構築
  • メタデータ運用能力を残しておくことが必要

2.方向性と検討結果

  • 「目録センター館」の指定
  • インセンティブモデルの導入
  • 参加機関の機能別グループ化

3.今後の課題
上記の提案の実現可能性の調査研究を行う必要性がある。また、NACSIS-CATの運用はNIIのみならず、大学図書館全体の運用に関わるため、図書館との連携のもと検討を進める必要がある。

4.ロードマップ

*1:書誌ユーティリティ課題検討プロジェクト中間報告. http://www.nii.ac.jp/CAT-ILL/contents/ncat_info_kadaiPT-interim-report.pdf

*2:参照: 次世代目録所在情報サービスの方向性. http://www.nii.ac.jp/CAT-ILL/event/images/1okuken_4_summary.pdf