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klarer-himmel13's diary

(旧)図書館の中では走らないでください!から

"Student Involvement for Student Success: Student Staff in the Learning Commons"をざっくり読んで

文献紹介

学生のための学生参加:ラーニング・コモンズにおける学生スタッフ調査(文献紹介) | カレントアウェアネス・ポータル
http://current.ndl.go.jp/node/23522

ブックマークして、しばらく放っておいてようやく。
読書日記シリーズは文献紹介シリーズに集約することにしました。

Julie Mitchell and Nathalie Soini, "Student Involvement for Student Success: Student Staff in the Learning Commons"
Coll. res. libr. Accepted: April 18, 2013; Anticipated Publication Date: September 1, 2014

Full Text (PDF)
http://crl.acrl.org/content/early/2013/05/13/crl13-469.full.pdf+html

議論を読み違えている/重要な論点を見落としている可能性がありますので、その点はご了承ください。個人的に読んでいて「へー」と感じることが多かったので、ぜひ原文をお願いします。
リプリント版の時点で24ページ。表紙とレファレンスがあるとはいえ、ボリュームが…そして英語…
1.はじめに
CAさんが紹介されているようにカナダにあるブリティッシュコロンビア大学のJulie Mitchell氏と、クイーンズ大学のNathalie Soini氏による「ラーニング・コモンズでスタッフとして働く学生の状況とスキルアップの研修」に関する
調査、報告、そして考察が主なテーマです。

前半は学生スタッフの属性、雇用環境などについて、そして後半はトレーニングプログラムについてです。トレーニングプログラムについて、主な観点は

  • ラーニング・コモンズで働く学生はが受けるべき研修の中心とは何か
  • 研修を行う上でベストな方法とは
  • どのように高品質なサービスと維持できるのか、問題点を確かにするために十分なサポートをどうやって提供できるのか

2.文献紹介
(文献紹介でさらに文献紹介を)
大学において、学生がスタッフとして働く歴史というのは、早い事例として1950年代から確認されているようです。それは、キャンパスにおけるpeerリーダーシップとして、学生寮とかオリエンテーションなどでの事例が報告されています。大学図書館ではレファレンスデスクに学生がnon-professionalスタッフして働いている、という文献が1975年に紹介されているように
1960年代後半〜70年代には、学生が図書館内で知的労働(sophisticated tasks)に携わっていたようです。
学生が大学で学生スタッフのトレーニングについて論じた文献は、これまでにたくさんある一方、ラーニング・コモンズで働く学生へのトレーニングに関するものは
これまでほとんど無かったといいます。包含関係から言うと、前者のなかに後者が関係するものもあるでしょう、と。

学生スタッフの強みとして挙げられていたのは、クイックレファレンス/複雑なものの住み分けとその橋渡しができること、正規スタッフが対応できない時間外(夜遅く)に
対応できること、利用者である学生にとって気軽に声をかけやすいこと、などが挙げられていました。
これは大学(図書館)と学生(利用者としての)にとってのメリットです。

学生スタッフにとって、働くことがどんな側面を持つのかを考えるときに、「peer leader(またはleadership)」が、ポイントとなるのかと感じました。
これは全体を通して感じたことですが、スタッフを育てる、というメインテーマをもっと具体的にしたキーワードが「peer leader(またはleadership)」のようです。
このpeer leaderというのは、Sullivanのことばを借りると「自分をサービスを受けるものとしてだけではなく、組織の目標を達成する仲間なのだ」という。もうひとつ、学生スタッフにが得る経験として他分野の学生との出会いです。

学生スタッフのトレーニングプログラムについて、具体例としてヴィクトリアル大学図書館とValparaiso University図書館の取組が紹介されています。スタッフの入れ替わりが激しい中でどのようにプログラムを整えていくか、というのはどこの現場でも考えられることでしょう。

そしてここ(ラーニング・コモンズでのトレーニングプログラム)においても、他のpeer leadershipに責任があることに注意することは重要なポイントになります。(スケジュール調整、スタッフへの仕事量の配分など)スタッフとしてというより、成長過程にある学生を育てるという観点がかなり強調されていました。
そして、ラーニング・コモンズにおける学生スタッフへのトレーニングにおいて、「cross-training」という観点が出されます。
何がcrossかというと、従来の図書館の利用指導のほか、ITスキル、情報検索方法、アカデミックスキルなどなど、他の組も関係してくるにあります。
これはラーニング・コモンズという場所が持つ、crossな性質が影響しているのでしょうか。このような点でラーニング・コモンズの学生スタッフは従来のそれとは、少し異なる点を持つと言えるのかもしれません。

3.調査とその結果
具体的に著者が行った調査は、2011年9月30日〜10月27日にわたって、ラーニング・コモンズとインフォメーション・コモンズの学生スタッフについての聞き取り調査です。質問項目とその結果についてまとめてあります。

  • 問1:学生スタッフの学年
    • Undergraduateが92%、Graduateが53%
    • 面白かったのがLibrary School Studentが別立てになっていた点(14%)

これは自分の印象なのですが、日本のラーニング・コモンズで働く学生スタッフは院生が多い気がします。学生スタッフへのトレーニングに対する意識の違いとかにも影響するのでしょうか。

  • 問2:どうやってトレーニングしていますか
    • In-person trainingが97%と大半
    • むしろOnlineが34%あったことが印象的
  • 問3:トレーニングの範囲について
    • Formal Tranigが40%
    • on the jobとformalとOJTの組み合わせが25%程度で同数
  • 問4:トレーニングの内容は?
    • ITサポートが72%
    • 一般的な大学案内が59%
    • 図書館での情報検索が56%
    • 対してライティングサポートは13%

トレーニングの内容がそのまま、ラーニング・コモンズの学生スタッフへの期待とはいえないのですが、ラーニング・コモンズはどのような場所であってほしいと思われているのか、俄然気になりました。

  • 問5:最初のトレーニング後のフォロー
    • 81%が新人教育を実施
  • 問6:新人スタッフへのトレーニング
    • 毎週または2週に一回のミーティングが20%
    • 1学期に1-2回のミーティングが18%
    • OJTでその都度が14%
    • formalなワークショップへの参加も6%
  • 問7:スタッフをどうやって調査/管理している
    • 先輩とペアが27%
    • 報告書や観察でが24%
    • 利用者からのフィードバックというのもありました
  • 問8:スタッフミーティングについて
    • 73%が定期的に行なっている
  • 問9:スタッフの総数
    • 1-15人が39%と最も高い
    • 平均値は29人
  • 問10:1週間の労働時間
    • 6-10時間/週と11-15時間/週が最も多くそれぞれ37%
  • 問11:働く時期
    • 年間とおしてが63%
    • 授業機関中のみが37%
  • 問12:その他自由記述

4.ディスカッション
正直、議論の部分は追いきれていません。。
ラーニング・コモンズが初年次や学部生を対象にし、ピアサポートのモデルになっていることを考えると、学部生をスタッフに雇っていることは何ら不思議ではない、とあります。ただ、個人的には同学年の友人には聞けないけど、研究室配属前で先輩の接点があまりない初年次にとって、もう少し年上の学部4年〜修士くらいの学生がラーニング・コモンズにいる利点もあるのではないのかなぁと思います。これは日本の大学事情によって異なってくるのかもしれませんが。

最初の質問にもありましたが、ラーニング・コモンズが図書館にあったとしても、必ずしも図書館情報学の学生だけを雇っているわけではないというのは、なるほどと思い当たる節があります。
むしろ、図書館に縁のなかった学生が来ることで、図書館を使わない原因が分かるきっかけになったり、学生自身がスタッフをきっかけに図書館を使うようになったり、これまでの利用方法に+αになるのではないかなと。

もうひとつ、問2でも触れられていたオンライントレーニングです。MOOCやOCWが話題になっているのなら、学生スタッフへのトレーニングをオンラインで行わない理由にならないのかもしれません。(方法やツールもあるだろうし)プログラムを用意することによって、学生が自分で研修ができる、学期途中でのスタッフの交代にも対応できるといった利点もあります。基本的なものはオンラインで、追加的・応用的なものは研修やOJTというように。

調査結果が示すように、トレーニングの方法、内容、頻度はさまざまです。それはラーニング・コモンズやスタッフの規模にもよりますし、そのラーニング・コモンズがどういったサービス対象を持つのかということにもよるかとは思います。ただし、共通して言えることはミーティングはわりとポピュラーで大切な方法だということでした。
ラーニング・コモンズではないですが、大阪芸術大学図書館の取組についてお話を伺った時に、かなり頻繁にミーティングをされているとのことでした。*1

5.結論
(だんだん読み込みが薄くなってます、すみません。。)
この調査はあくまで北米のもの、各大学の事情によって様々であると但し書きはあるものの、ピア・ツー・ピアのサポートの利点は共通しているのでしょうか。

その強みがある一方、雇用の過程や、研修や管理・監督にはそれなりの時間の投資が求められます。とくに学生スタッフは交代が頻繁に起きるので、いっそうトレーニング(内容、方法、効率)が大切になります。

今回の調査は今後学生スタッフのトレーニングを考える際に、助けとなるでしょう。
(内容面:ITサポート、一般的なキャンパス情報、図書館での情報検索がトップ3。方法面:オンライン、in-person、ピア・ツー・ピア。学生スタッフの質を保つための方法などなど)

この研究の次の段階はそれぞれのラーニング・コモンズのスタッフ同士がつながること。リソースや方法を共有。
日本の事例ですがこんなものを発見
大学図書館学生協働交流シンポジウム「私たちができる図書館づくり」
平成24年9月10日
島根大学図書館コンシェルジュ、山口大学図書館学生協働、梅光学院大学図書館サポーター、島根県立大学学生図書委員がそれぞれ事例報告をされたようです。
http://www.lib.yamaguchi-u.ac.jp/LA/sympo2012/


感想的なもの
文献の結論にもありましたが、ラーニング・コモンズはcomplex environmentです。
それは自分の単純な実感としても思います。(こういう質問が来るのかと驚いたり)自分は閲覧やILLといった、いわゆる「図書館サービス」を知らない図書館員なのですが、他のみなさまはラーニング・コモンズの複雑さは、他の図書館の部分とくらべてどのように映るのでしょうか。
その複合体の中で働く学生スタッフ(と自分たち)をどのようにトレーニングするのかという取組が、今後増えていけばいいなぁと。
読んでみようと思った文献
細川 和仁,「初年次教育における学習ピアサポート活動」『秋田大学教養基礎教育研究年報』2008-03-00
http://air.lib.akita-u.ac.jp/dspace/handle/10295/767

*1:図書館で、できること。図書館が、できること。 : 図書館と学生の協働によるコミュニケーションのかたち,多賀谷 津也子,  専門図書館 NO253(2012),P27-31