FRBRからLRMへ:書誌情報にかかわる新たな概念モデルについて
2018年4月28日@大阪学院大学
14:30‐17:00
発表:和中幹雄氏(大阪学院大学)
月例研究会案内(情報組織化研究グループ)
この手のお話に全く追いついておらず、LRM(IFLA Library Reference Model)の話はほぼ初見。3月に公開された「カレントアウェアネス」(CA1923)を補足する発表だった。字数制限で書けなかった点、具体例や各実体、属性、関連の定義のお話が中心だった。
紹介された文献(日本語で読めるもの)は以下の3つ。
CA1923 - 動向レビュー:IFLA Library Reference Modelの概要 / 和中幹雄 | カレントアウェアネス・ポータル
和中幹雄. FRBR-LRM(FRBR, FRAD, FRSADの統合案)の概要メモ. 資料組織化研究‐e. No.69(2016.10) p. 27-41.
http://techser.info/wp-content/uploads/2016/10/69-20161027-3-PB.pdf
千葉孝一. FRBR再考. 資料組織化研究‐e. 資料組織化研究‐e. No.69(2016.10) p. 1-17.
http://techser.info/wp-content/uploads/2017/04/FRBR__0416.pdf
原典は下記から
IFLA -- IFLA Library Reference Model (LRM)
カレントアウェアネスをはじめ、文献で説明されている箇所は重複するので、気になった部分やよくわからなからなかったところだけメモ。
歴史的な経緯
(1)FRBRのバージョンアップ
1998年に誕生したFRBRは想像以上に広がって、2009年にFRAD(著者名典拠)や2010年にFRSAD(件名や分類)が発表されている。
誕生から20年を経て、セマンティックウェブを前提とする現代において、その定義のあいまいさや、FRADとFRSADとの間に生じる用語のずれモデル同士の異同を解消するための新モデル=LRMという立ち位置。
ちなみに、FRBRにもとづいたRADであるが、LRMに対応するためのtool kitを公開予定である。新NCRも何かしら影響されるのだろうか…?
(2)その名称から「FRBR」がなくなり、むしろFRBRから一度なくなった「Library」が復活した
(図書館)外とつながるために外を意識したモデルであった(という私の理解)FRBRに対して、LRMは(図書館とは)違うモデルとの相互運用性を担保するために(図書館側からの)姿勢を示すことを目的にしている、というお話であった。
それの表れとしてOMR(Open Metadata Registry)の名前空間に登録されている、FRBR(FRBRer)、FRAD、FRSAD、LRM、FRBRoo(object orientated。博物館と図書館の統合モデル)の各クラス数、プロパティ数、総エレメント数を比較すると、LRMはずいぶん少なくなる、と予想される(カレントアウェアネスの表1)。
むしろ、FRBRooやPRESSoo(逐次刊行物の概念モデル。LRMは逐次刊行物についてはこちらに任せているのでLRMでは逐次刊行物の部分はシンプル)などほかのコミュニティとの調整を意識しているらしい。ところで、FRBRooは「FRBR」という文字が入っているが、まったくのほかのコミュニティというポジションなのだろうか…?FRBR→LRMになることで、FRBRooの名前はそのままなのだろうか…?
内容のはなし
(3)概念モデルの仕様書により近い形
ID、Name、Definition、Constrainsts、Scope Note、そしてExamplesという表形式ですべて表現されている。FRBRが記述で表現されているがゆえに、これらが混在していてわかりにくくなっていた点を解消しようとしている。機械処理を前提としている。
(4)実体の階層化
- Res
- Work
- Expression
- Manifestation
- Item
- Agent
- Person
- Collective agent
- Nomen
- Place
- Time-span
たとえば、Agentの定義は下位(PersonとCollective agent)にあてはまり、それぞれ定義を繰り返さない
(5)LRMで新しく登場する実体
立ち位置
(6)属性より関連重視
電子な世界において、ManifestationやItem、その属性よりも、WorkやExpressionで紐づけられることが重要になる。
質疑応答で言及された「ハブとしてのLRM」
(7)エンドユーザに焦点
いわゆる図書館内部プロセスに必要な「管理データ」や図書館員固有のタスクであるJsitifyが対象外になる