GakuNin RDMを理解するために『The Realities of Research Data Management』を少し読んだ話
すでに2年以上経過しているが、OCLCから『The Realities of Research Data Management』が公開されている。
先行事例をケーススタディとRDMサービスを構築するための、設計図というか概念を理解するためのレポートである。(という理解)
RDMについて関わろうとする機運が高まっているな、と感じ始めてはや数年が経ち、現場レベルでデータデポジットの事例に対応する中で、仕組みから始めるのか、中身から始めるのか。仕組みもシステムを用意するのか、ポリシーを制定するのか、中身も人材を集めるのが先か、データをとりあえず集める(把握する)のか、いろいろと課題はあるが、国内において汎用的に活用できるサービスがある。
GakuNin RDMは実証実験中であり正式なサービスイン前であるが、GakuNin RDMや研究データ管理を理解するために、類似のサービスや実践例と比較がしたいなぁと思い、上記の『The Realities of Research Data Management』を少し読んだ。
全4パート+付録で構成されているが、最初の1・2パートを中心としたウェビナーが公開されているので、60分で何となく概要をつかむこともできる。付録の実践例を見ながらいくつか気になったことを取り上げる。
OCLCのレポートは上記の概念図をベースにしながら、RDMを解説し、各大学の事例を整理している。
GakuNin RDMはRCOSのなかで、管理基盤を担っている。このレポートにあてはめると、Curationの部分に該当するだろうか。Curationはつまり、管理+公開+検索基盤だという理解である。
レポートで紹介されている事例から、このCurationに注目する。
University of Edinburgh
https://www.ed.ac.uk/information-services/research-support/research-data-service
ストレージ:DataStore(500Gb/人。グループ版もあり)。
共有:DataSync
公開:DataShare
長期保存:DataVault
研究者管理:Pure
University of Illinois at Urbana-Champaign
ストレージ:Active Data Storage(ADS)($96/TB/year~)
共有:U of I Box
公開:Illinois Data Bank
長期保存:Medusa
Monash University
https://www.monash.edu/library/researchers/researchdata/about
ストレージ:Monash Google Drive
管理:myTardis、LabArchive、ownCloud(いずれも外部サービス)
公開:myResearch Portal(Pureをローカライズしたもの)
長期保存:figshare機関版、VicNode(ナショナルサービス)
Wageningen University & Research
管理:Git@WUR(Gitの機関版)
ストレージ・保存:DANS-EASY(ナショナルサービス)、4TU Centre for Research Dataを推奨(3大学の共同運営)
公開:National Academic Research and Collaborations Information System(ナショナルサービス)
研究者管理:Pure
GakuNin RDM
University of EdinburghとUniversity of Illinois at Urbana-Champaignが機関としてのサービスをがっつり提供しているのに対して、Monash UniversityとWageningen University & Researchは、オーストラリアとオランダで、国や大学間連携のレベルでのサービスを構築しており、それに適した学内サービスを提供している。特にMonash Universityは外部サービスをよく利用している。
では、GakuNin RDMは日本のRDMをどのようにデザインしようとしているのかなと考えると、後者(オーストラリアとオランダ)のように、ナショナルレベルでのサービスによって大まかな基礎的なサービスを提供し、そのほかの部分を各機関が設計できるようにしたいのだろうなぁと。