第118回 ku-librarians 勉強会:ERMSを中心とした電子リソース管理/アクセス環境の整備
京都大学附属図書館の図書系職員勉強会である、ku-librarians勉強会におじゃましてきました。
ブルーグラスの学生さんに道を教えていただきつつ、参加することができました。以下、まとめと感想などを。
第118回 ku-librarians 勉強会
タイトル: 「電子リソース管理業務の舞台裏 : ERMSを中心とした電子リソース管理 / アクセス環境の整備」
発表者: 渡邉英理子氏(京都大学附属図書館情報管理課雑誌情報掛)
日時: 2009年12月11日(金)18:30-21:00
場所: 京都大学附属図書館4F スタッフラウンジ
- 電子リソースとは
- 電子リソース管理の提供の実際
- ERMSを中心とした管理と提供
- ERMSのこれから
上記の4つの観点から、発表していただきました。
ku-librarians勉強会はHP*1にて勉強会の記録をアップされています。
当日、twitter上*2にて実況および質疑応答もされました。
- 電子リソースとは
- 電子的に配信され、インターネット上で利用可能な一次情報/二次情報
- 外国雑誌において、EJの増加と冊子体の減少、EJの利用増加
- 電子リソースの特徴とそれをめぐる状況
- 情報へのアクセスのしやすさ(時間的、物理的制約がないなど)
- 検索機能、リンク機能
- ものが来るのではなく、見に行く(情報は提供者のサーバーにある)
- 利用統計
- パッケージ契約、
- 独自の契約方法(FTE、tier制など購入側の条件によって価格が異なる。プライスキャップ)
- 高額(毎年数%の価格の上昇、パッケージ契約、購読規模維持など)
- コンソーシアムでの交渉(JANUL,PULC,JMLA,JPLAなど)
- 契約、電子リソースリスト管理、ユーザサポート
- 利用促進のために電子リソースの適切な管理が必要
- コンテンツの充実
- スムーズな情報の発見・入手・サポート
- 安定的な提供
- 電子リソース管理と提供の難しさ/課題
- タイトル管理の難しさ(パッケージ契約、移管、フリーアクセスの管理)
- 契約内容の多様さ
- 契約・管理情報の一元的な管理が困難
- アクセス権の管理と保持(ジャーナルによってはバックファイルを書品として提供する出版社もある)
まずは、電子リソースの契約、購入、管理までを、京都大学の事例を中心に、また業務フロー図を交えながら説明されました。電子リソース独自の特徴をまとめて報告いただきました。
その特徴とは、1.コンテンツを持っていないこと、2.独自の契約方法と管理方法の存在、3.それらのモデルとなる方法が冊子体と比べるとまだ確立されていなことなどが中心になると感じました。
ERMSは上記の困難さを解決するひとつの方法として紹介されました。後半はERMSを中心とした管理と提供、さらにこれからの展望へと続きます。
- 電子リソースリストの管理システムとして360Coreの導入
- リンクリゾルバ導入とEJ,E-Bookの書誌をOPACに追加
- ERMSとして360 Resource Managerを導入*3
- ERMS(Electronic Resource Management System:電子リソース管理システム)とは
- ERMSの特徴—できること
- データを集約/蓄積できる
- 契約は過去の積み重ね
- [これまで]と[これから]の契約・提供のために
- データを共有できる
- 契約担当のみが持っていた契約情報を共有することでILLや重複契約解決などのサービスの向上も期待できる
- 利用条件やお知らせをユーザに提示できる
- ユーザサイドが参照する箇所が減る
- データを集約/蓄積できる
- ERMSの特徴—課題
- 図書館システムとの連携
- ワークフローの見直し
- ERMSの機能、システム上の問題
- 共に育てて行くという意識
- SerialsSolutionsの日本ユーザグループ
- ERMSのこれから
- NACSIS-CATの次期システム構想におけるERDB(電子情報資源データバンク)
- 電子リソースの書誌データ、アクセス可能範囲を格納
- 各機関のEJ利用情報をハーベスト、アップロードにERMSを利用?
- 国内ナレッジベースセンター
- 国内学協会などの国内学術雑誌の電子リソース(海外のKBには収録されていない)を対象
- データ電子交換のための標準化
- NACSIS-CATの次期システム構想におけるERDB(電子情報資源データバンク)
発表後は質疑などが続きます。
ERMSの課題として利用者に制限をつけることができず、編集者はすべてのデータに触れてしまう点が指摘されました。部局や館室ごとに契約している以上、それらの改善は望まれます。
また、図書館システムで管理する可能性も話題にのぼりました。個人的には図書館システムが電子リソースを扱うことができないというのも、変だなと感じました。ただ将来的には図書館システムにERMS機能が組み込まれる(あるいはその逆)こともありうるかもしれない、という予測もされました。
KBが鍵と書きましたが、KBから消えた情報はERMSからも消えてしまうのでバックアップの点も考慮の必要ありです。
以下、紹介された+個人的な文献リストです。
Electronic Resource Management Report of the DLF ERM Initiative(2004)
http://www.diglib.org/pubs/dlf102/dlf102.htm
電子情報資源管理システム(ERMS)実証実験 国立情報学研究所(2007/2008)
http://www.nii.ac.jp/CAT-ILL/about/infocat/erms_test_h20.html
http://www.nii.ac.jp/CAT-ILL/about/infocat/erms_test_h19.html
京都大学附属図書館は電子情報資源管理システム(ERMS)実証実験に平成19-20年度にわたって参加されています。
次世代目録所在情報サービスの在り方について(最終報告)国立情報学研究所学術コンテンツ運営・連携本部図書館連携作業部会(次世代目録ワーキンググループ)2009
http://www.nii.ac.jp/CAT-ILL/archive/pdf/next_cat_last_report.pdf
eSerials Holdings [OCLC]
http://www.oclc.org/eserialsholdings/default.htm
尾城孝一. 電子情報資源管理システム : −DLF/ERMIの取り組みを中心として−. 情報管理. vol.47,no. 8, 2009, 519-527
http://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/47/8/519/_pdf/-char/ja/
増田豊. 電子情報資源管理システムと現状--DLF/ERMI第2フェイズの成果. 薬学図書館. vol.54,no.2, 2009, 104-109
横溝聖子. 氾濫する図書館リソースの管理のために--Serials Solutions 360 Resource Manager (特集:電子リソースのマネジメント--ERMSの現在). 大学の図書館. vol.37,no.3, 2008, 40-42
最後に個人的な雑感
- 図書館システムに備わるべきと思う反面、従来の図書館システムほどあらゆる機関に必要ではないのかもしれない
- クレーム管理にタグ機能があるとうれしいかも
- 利用者のアクセス管理(制限)の問題
- 誰が管理するのか、システムと業務フローが出来上がるまでがひと山
- KBが商品となるのなら、ERDBにも何か対価がいるのでは
- 経費ごとに購入しているものがわかるのはとても嬉しい
- 英語のインターフェイスは大丈夫だろうか
発表者の渡邉さんにはERMSについてまとめていただき、私自身の理解を大変助けていただきました。すべてを消化しきれていないので、すこしずつ理解していきたいです。今回、参加させていただきありがとうございました。
*1:図書系職員勉強会(仮称)ホームページ:http://kulibrarians.hp.infoseek.co.jp/accessed (2009/12/13)
*2:参考:http://twitter.com/kulibrarians(accessed 2009/12/13)
*3:参考:SerialsSolutions社のHPより、http://www.serialssolutions.com/360-resource-manager/(accessed 2009/12/13)
*4:KBについては質問やコメントが多かったように思います。このKBの質がERMSに影響し、ERMSに投資することは、このKBの質にお金を払うことにもなります。