文献調査も検索する前が肝心―最近読んでる本とライティングについて考えたこと
一ヶ月前に公開されたこちらのブログ記事を拝見した。
主にウェブサイト(サービス)を書くことがいつまで経っても苦手なことに、そろそろ何とかしたいなぁとでブックマークをつけたのがきっかけ。
記事を拝見して、自分が作りたいもの、そのためにどんな材料が今手元にあって、何が必要で、その差を埋めるために何が必要かをあまりわからないまま、行き当たりばったりなので、いつまで経っても体系的に学べないのか…と反省しきり。
そして、フローチャートを眺めながら、「これはレファレンスインタビューおよび、レファレンスの流れそのものじゃないか」と思った。そこでレファレンスに置き換えてみた。自分は大学図書館にいる人なので、メインユーザーは研究者と学生のどちらか(あるいはどちらの)性格をもった方々である。今回は学生の場合を考えてみた。そのため、課題の出発点をレポートにした。
この図を書いたポイントは3点。
- 「肝心な部分」はレファレンスインタビューに読み替えることができる
- 参考図書は大切
- レファレンスインタビューとライティングは密接に関わる
1. 「肝心な部分」はレファレンスインタビューに読み替えることができる
最近、読んだ『情報サービス論』の第3章「3.レファレンスプロセス」によると、
ジャホダ(G.Jahoda)らは、質問内容を明確化するための具体的なチェック・リストとして、次の7項目を挙げている。
- それは質問者が真に求めているものであるか?
- 求められている情報のタイプが明確になっているか?
- 質問の主題がはっきりわかっているか?
- 質問の表現にあいまいな点はないか?
- 求められている情報の量がはっきりしているか?
- 求められている回答のレベルが明確になっているか?
- その質問は許容される時間内に回答可能なものか?
- 作者: 山崎久道
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たまに、友人に自分のお仕事の話をすると「そこまでやるの?」と驚かれる。それは当然だろうと思う。
レファレンスといっても、「○○はどこですか?」という単純なものも、ILLサービスの依頼前に行う予備調査もレファレンスに含まれる。年末のブログにも書いたけど、自分が働いているところは、"ILLコンサルティング"としての側面が強い。
では、そうでないレファレンスは「そこまでやるもの」なのだろうか?
これに対する答えを自分は持っていない。学習や研究の支援って何だろう?というぼんやりとした疑問を抱えている。
上図のオレンジ部分=レファレンスインタビューは、学習者がやるべきことだと言い切ることもできる。しかしながら、何かを調べるということにおいて、ツールや調査技術は便利な道具として独立したものではないと思う。たぶん、他の人よりかはほんのすこしだけ調査技術と知識はあるので、それを肝心な部分に生かすこができれば、レポートに少しでも貢献できるかもしれない…という希望を持ってその疑問に向かい合っている。
同書によると、レファレンスインタビューを面接法にあてはめて、「与える面接型」「引き出す面接型」「両者の混合型」の3つのパターンで説明されている*1。「引き出す」というのは、なかなか難しく、こちらとしては「他人に話すことで思考が整理されるし、ついでに自分では気づかなかった文献が見つかるとラッキーですから」くらいの心持ちである。
補足事項。「情報検索の流れ」という図が、同書の110ページに掲載されている。経験値の低い自分には、一方でレベルが高く、もう一方でこれほど時間をかけることを、ユーザーは良しとするのだろうかという不安に感じた。正確で漏れのない結果とスピードは時にバランスが難しい。「いつまでに必要ですか」という期日を確認することは、もちろん鉄則ではあるけれど、即答が当たり前になっているというのもまた事実。
2.参考図書は大切
よくレファレンスをうけるのは最初の検索で躓いた時、「いいのが見つからなくて」というパターン。最初は自分で試して、うまくいかない時にもう一度、レファレンスインタビューからやり直す。
要点がある程度、明確になっていたら「別のキーワードを考える」に。ここで参考図書が大切になってくる(と主張したい!)
現在、自分のなかで「参考図書の復権運動」を実施中*2なのだが、きちんと反論する言葉を探していたところ、赤木かん子『先生のための「百科事典」ノート』にこのような記述があった。
百科事典は決して“答えを探すためだけに読む”のではありません。
というわけで、今紹介してきた、三つの理由、
①定義を読むため→考える土台を作る
②自分の知識を確認するため→思い込みの訂正
③新しい知識を得るため→視野を広げる
これが、“調べものをするときに、なぜ、いちばんはじめに百科事典を見るの?”の答えです。*3
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この本は小学校の先生をターゲットにした本ですが、百科事典、(もう少し拡大解釈して)参考図書の大切さを表す的確な1文だなと思いました。
文献検索において、シソーラス、引用、文献目録をさらうなど、「キーワード検索をしない」方法もある。ただし、それらは分野や事例が限られており、一般的にはキーワード検索が多くを占めている。その時に選ぶキーワードをうまく選べない=検索がうまくいかない。その時に自分が知っていることばはその分野では専門用語なのか、他に適切な語はあるのかということに気をつけている。
以下補足。参考図書の他に教科書などの索引。索引になっている=その本(ひいてはその分野)にとってポイントとなることばなので、索引に掲載されたことばを拾うだけでもけっこう勉強になる。
ちなみに、自分のなかで放送大学のテキストはかなり高評価で。章ごとの参考文献リストときちんとした索引が、テキストのスタンダードになっていて、ものすごく勉強しやすいつくりになっていると思う。テーマが絞り込みにくいテーマが出されたら、まず、参考図書を放送大学のテキストがないか調べることをおすすめしたい。
3.レファレンスインタビューとライティングは密接に関わる
3つめは1.と関係する。また、自分の中で1.以上に迷いが多い。
「肝心な部分」(オレンジの部分)は学習である。もう少し、今回の図に絞ったかたちで言うと、レポート作成のプロセスのおいて、最初の段階を示している。つまり「分析・考察による結論付け」や「構成の決定」にあたる。つまり、
「肝心な部分」は「レポート作成の最初の段階」である
「肝心な部分」は「レファレンスインタビュー」に関わる
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「レポート作成の最初の段階」は「レファレンスインタビュー」に関わる
とも言える…のかなぁ。
最近、ライティング指導と図書館の関わりの事例をいくつか耳にして、自分でも色々と調べていた。教員と図書館員の協働という中で、どこにポイントがあるのだろうと考えた時に、ここなのかもしれないと。
ライティングとサーチは、それぞれが密接にくっついている。そのぼんやりとして分けにくい箇所に、協働の可能性があるのかもしれない…とぼんやり。