klarer-himmel13's diary

(旧)図書館の中では走らないでください!から

『資料検索入門』を読んで

資料検索入門 ― レポート・論文を書くために (アカデミック・スキルズ)

資料検索入門 ― レポート・論文を書くために (アカデミック・スキルズ)

今年の1月に刊行されたものですが、最近、ようやく読みだした。まえがきによると、大学初年次の学生にむけて慶應義塾大学でされている「資料検索入門」という授業の集大成であり、そのテキストという位置づけと同時に、同じような授業を担当する大学図書館員に向けた参考書という側面もあるという。1990年代に登場した「情報リテラシー教育」という情報の収集、評価、活用までをカバーした広い(そして掴みどころのない)概念のもと、大学図書館が取り組んできた活動でもある。

内容は5章+附録。

第一章 レポート・論文を書く
第二章 情報の種類と評価
第三章 情報検索の実際―「問い」を立てるまでの情報検索
第四章 統計情報の種類と入手方法
第五章 資料を入手するためには
附録  検索の手引き

ざっと読んだ印象では、第1~3章までがメイン、4章は特殊な事例として別枠、5章は図書館利用案内。おーと思ったのは、章タイトルだけを読むと3章に入りそうな(むしろメインになりそうな)検索の手引き(OPACの使い方、CiNiiArticlesを例とした論文検索、GoogleScholar)が附録として最後に追加されていた点。

もちろん、3章にOPACの説明はあるけれど、例えばどうやってキーワードを選ぶのか、一つの情報から次の情報につなげるにはどうしたらいいのか、自分の論を補強するためにどんなタイプの情報が必要なのかを判断するのか、といった点にフォーカスされているされているように感じた。

文献検索は、研究の始めから、論文を書き上げるまで続く重要で欠かすことのできない作業なのです。(78ページ)

もう少し第三章。「問い」を立てる情報検索に必要なのは、

  1. 面白いというもトピックスを見つける
  2. 面白いと思ったものの関連する情報を集める
  3. 情報を読み込んで知識を増やし、自分の頭のなかを整理する

といったプロセスを踏むことになる。
このような説明を本書では具体例を挟み込むことで、進められている。

少し前後して、第二章も紹介。
第二章はどんな情報源を選べばいいのかを判断する材料として、各情報(図書、雑誌、新聞、参考図書)の特徴と、インターネットの情報の判断基準例を紹介している。これの元の一部はと思われる。
KITIE - Keio Interactive Tutorial on Information Education

第四章は統計の話。統計の集め方は断片的にしか、知らなかったので読んでいて「そうなのか」の連続。さらには活用にまで触れている。おもい引用にあたる注意点と、データを探す目的(そのデータを使って何をしたいのか)をはっきりさせることを指摘している。

もちろん、著者が慶應義塾大学の方々なので、蔵書検索(OPAC)の例として、KOSMOSが例として使われていた。KOSMOSはディスカバリーとしてではなく「蔵書検索(OPAC)の検索」の下に登場した。蔵書目録とディスカバリーの違いをそこまで明確に分けて説明されていない。(ディスカバリー教えるものなのか?という疑問も一方にありつつ)他大学の例として早稲田大学のWINE(OPAC)と九州大学のCute.Search(Summon)が紹介してある。
その他データベースは、日本語ものもを中心に。やNDL-OPAC、JAIROなども簡単に紹介。GoogleScholarはけっこうしっかり説明されている。

まとめ。
他大学の講義内容って文献から知る以外に、直接に教材を見たりすることが少ないので、事例として参考書としてとても参考になった。

あとで読んでみようリスト
CiNii 論文 -  図書館員による情報リテラシー教育〜現在・過去・未来 (特集:情報リテラシーの育成と図書館サービス)
CiNii 論文 -  情報リテラシーを高めてもらうために : パートナーとしてのライブラリアン
CiNii 論文 -  考え学ぶ力のための支援--慶應義塾大学 (特集テーマ 学習環境としての大学図書館)