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(旧)図書館の中では走らないでください!から

第11回レファレンス協同データベース事業フォーラム つながる図書館の情報サービス:「調べる方法」の公共性 #crdf2015

第11回レファレンス協同データベース事業フォーラム つながる図書館の情報サービス:「調べる方法」の公共性

日時:平成27年2月19日(木)14:00~17:30
会場:国立国会図書館 関西館


第11回レファレンス協同データベース事業フォーラム「つながる図書館の情報サービス:「調べる方法」の公共性」 - Togetterまとめ



USTREAM: crdf2015: 第11回レファレンス協同データベース事業フォーラム「つながる図書館の情報サービス」の中継です。事業サポーターにより運営しています!. その他...

Ustreamによる中継があるので書き起こしのようなことはせず、ゆるっとまとめていく。

最初にレファレンス協同データベースを知ったのは、(おそらく)2009年のARGカフェ&フェスとだった。

持ち寄りのお弁当になぞらえた紙芝居が、とても印象的でよく覚えている。

そこから6年、レファレンスに関わるようになったものの、いまいち使い込めていないのを一念発起して、初参加。

レファレンス協同データベース事業フォーラムは11回め。フォーラムの中で、どなかは忘れてしまったが「ようやくここまで来た」と言われたテーマは「調べる方法」の公共性である。

第1部 提言「つながる図書館の情報サービス」

「図書館における情報発信」

「図書館における」と冠しているが、図書館の外でジャーナリストとして活躍されている猪谷さんが見た、昨今のSNSによる情報発信のトレンドを概観していただいた。つながる書館、といえば今や猪谷さんの代名詞のような存在かもしれない。

つながる図書館: コミュニティの核をめざす試み (ちくま新書)

つながる図書館: コミュニティの核をめざす試み (ちくま新書)

mixiGREEYahoo!知恵、ブクログFacebookFlickrInstagramとめまぐるしく移り変わるSNS、それらを補完するようなTogetterNAVERまとめ。ニコニコ動画、個人での動画配信がより簡易になったUstream、LINE、バイラルメディアと状況はますます複雑化する。

それに伴い、図書館の情報発信も変化する。キーワードはBUZZ。例がいくつか挙げられた。


Flickr: nyplphotobooth's Photostream

東京外国語大学図書館で読める おいしい本 (murakamiharuka) - ブクログ

印象に残ったこと。

  • 普段、ニュース記事を執筆されているときにタイトルの付け方に注意を払っていること(バズりやすい、分かりやすい、クリックしたくなるものを)
  • ニュース記事にしやすい形でアップすると助かる(動画を公開するにもYoutubeなどembedしやすいものを)

第二部の質問時間で寄せられたもの

  • アカウントのキャラ作り
    • 企業アカウントを参考に。担当者の個性に頼ってもいい。少人数で担当するほうがキャラが作りやすい
  • バズるためには?
    • まずは自分が面白いと思うかどうか。リアルタイム検索を利用してトレンドを把握する
オープンデータと図書館

大向先生によるオープンデータの文脈における図書館。それは単なるデータの公開にとどまらず、図書館で生み出した知識をオープンにするという一つ先を見据えてのご発表だった。

オープンデータは、近年、注目と政策として推進されている。オープンガバメントの手段として公共性の高い情報を公共セクターが開放する気運は、欧米を筆頭に世界中で高まっている。

Open Government Initiative | The White House

DATA GO JP

オープンデータになっているか度ランキングまでもある。

Place overview | Global Open Data Index by Open Knowledge

日本の自治体の現況
日本のオープンデータ都市マップ

このフォーラムもその一環であるインターナショナルオープンデータデイ。
インターナショナルオープンデータデイ2014 | ハッシュタグは #oddj14

翻って図書館のオープンデータ。ひとつは、書誌・所蔵・典拠といった目に見えるデータである。これらは過去から現在にかけて、世界各地で様々な取り組みがされている。そのことにより、これらの取り組みがリンクされてつながっている。

例えばNDL Authorities→LCDへ。NDL Authorities→Wikipedia日本語→Wikipedia英語版へ。NDL Authorities→VIAFへ。その他にDDCはオープンデータになっているらしい。
Dewey Decimal Classification / Linked Data

NDCもそうなったらいいのに。

このような見える情報は、情報の多様化に晒されている。図書館以外にも本の情報を扱うメディア(出版社、オンライン書店検索エンジンソーシャルメディア)はたくさんあるからだ。

一方、レファレンス協同データベースのデータは、目に見えない情報と言える。つまり、情報そのものからは知り得ない情報であるし、書き手(図書館)の意図や編集などが入った創作物である。~の代わり、~ではないという事実は、情報そのものからは言及しにくい。こんな調べがあるらしい。

このようなレファレンス事例が集まったデータベースは、図書館が作る知識とも言える。

知識をつくる図書館の事例として、

ししょまろはんラボ
cheese-factory.info
Wikipediaタウン

印象に残ったこと

  • 図書館が何者であるかを伝えるのに「知識をつくる」という視点が面白いなと思った
  • それはSNSでのキャラ作りとも通じるのではないかと思う

第二部での質問

  • 図書館で情報を発信する際に自らで加工するほうがいいのでは?
    • 実際問題、技術や人材不足。ならば技術を持つ人をいかに巻き込めるかと言う視点に
  • レファ協のデータ(聞き取れず…)
    • 本のリンク、IDの重要性。逆引きが可能になる
図書館知の共有

小田先生からは、レファレンス協同データベースから、レファレンスそのものを考えなおす視点をお話いただいた。

過去の文献においても図書館活動が「知」そのものとして捉えられることも、図書館員が創りだした「知」が注目されることもなった。

図書館の「知」には2種類ある。方法的な知(調べる方法)と、活動の成果の知(レファレンス記録)である。前者は後者を一般化したものとも言える。

レファ協の公共性の前に、レファレンスの公共性を考える。情報提供や調べかた案内といった直接サービスの技術や知識を発展させたものとして、課題解決型サービスがある。また、文献利用指導や読書案内などのレファレンスとは異なるサービスとしてとらえられているが、レファレンスに性格がとてもよく似ているサービスも存在する。特にこれらは学校図書館レファ協に参加することでよりいっそう、再考の必要性が浮き上がった。

レファレンスは公共サービスかどうか、という疑問が投げかけられる。つまり、レファレンスを直接サービスのみに依拠すると、受益性という課題が克服できない。私自身も思い当たる節があるが、ややもすると個人秘書(もどき)になりがちである。レファレンスに対する「これに税金使うの?」という反応や、有料でも提供できる(実際、海外では有料にする事例もあるらしい)という意識などはその表れであろう。レファレンスが公益性を創出するには、直接サービスだけでなく、課題解決型サービスのように社会的な利益につながったり、読書案内のように図書館の利用に結び付く側面も求められる。レファ協はサービスの結果そのものが価値を持ち、結果の二次利用により、さらに益を生む活動と理解されることができる。

ここでレファ協の公共性という視点と、レファレンスそのものの公共性という根本的な視点(疑問)が提示される。

まず前者について、このあとに一部のまとめをされた山崎氏からも「レファ協はオープンデータ足りうるのか?」という提起がされた。レファ協は図書館同士のつながり、利用者を越えて図書館の外へとウェブという仕組みのなかで情報ニーズをつなげている。大向先生も、まずはデータがオープンであること、技術を持っている人の声をきけることが大切とおっしゃっていた。

そして後者について、「調べる方法」を検討する。小田先生はフォーラムの中で何度も言及されていたが、教育的な視点はもっと考えられるべきであると。学校図書館の参加により、調べたあとはどうする?というところまで、求められるようになった。レファ協は調べものの目的、リテラシーマインドの形成という視点がレファレンスに持ち込まれた。このことからもある種の公共性が創出されたといえる。個人的には大学図書館にいると、それを何に使うか(どのくらいのボリュームのレポートなのか、いつまでの課題なのか、等々)を確認せずにはレファレンスはしにくいので、私にはピンと来ないのだが、かつてはレファレンスの目的を聞いてはいけなかった、らしい。

印象に残ったこと

  • レファ協により館種を越えてレファレンスを共有し、レファレンスそのものを再考するほどのインパクトがあるのは面白い

第二部での質問

  • レファ協に登録される利用者の抵抗感
    • あることは事実、一方で嬉しいというのもある
    • 個人情報の取り扱いはレファ協の中で基準が定められている
  • 調べた後にどのように支援するか?
    • (すみません。メモを落としました)
  • オープン化と参加率、どちらをより優先?
    • どちらも

第2部 パネルディスカッション「つながる図書館の情報サービス:「調べる方法」の公共性」

4人のパネリストから、それぞれの立場でレファ協について語っていただいた。ディスカッションの前に、コーディネータの山崎氏より3つのトピックが提起された。(1)利用者は図書館の利用者に限らない、(2)図書館の情報はみんながより利用しやすいように環境を整えるべき、(3)情報を囲い込まない。これらのトピック(問題提起)への回答としてレファ協であり、オープン化の促進である。

  • 片岡氏
    • 未参加の立場から、レファ協を授業で使った実感「レファ協は役立って面白い」
    • 卒業研究をする学校で高3と2年生に使ってもらった感想
      • 逆に卒業研究をするような高校生だからこそ楽しめた
      • 中学生はまだ難しい
    • 上級生はパスファインダーを作る=後輩への贈り物≒公共性を持つ
  • 中山氏


授業に役立つ学校図書館活用データベース

    • 2013年度よりレファ協に参加
      • 自前のデータベースとは異なる工夫
      • 学校内だけで使えるキーワードは使わない
      • 方法論を得て発信するという姿勢
      • レファレンス事例を加工して文章化する能力が必要
    • 学校図書館の取り組みを見える化する
      • 資料はどのように使われているのか
  • 岡崎氏
    • 参加大学図書館として
    • 山口大学ではレファ協を試行中
    • オープン化により図書館サービスを意識させない
    • レファ協が検索結果のトップに来ることも?!
    • 自分はレファレンスをここから勉強してきた
  • 余野氏
    • 参加公共図書館として
    • 主にビジネス支援サービスを担当
    • 自治体を越えて聞かれることは一緒だという気付きと、地方の独自性
    • 他の地域を聞かれて調べることも。自館にはなくても所蔵館やそのテーマで必要なが分かる
    • データベース化していつでもだれでも参照できることで、均一なサービスの提供
    • 一方でレファレンスは誰ものか?という疑問
      • レファレンス事例はオープンデータにするような公共性を持つのか

オープン化における課題は何か?という話題で、中山氏がおっしゃっていた、レファレンス事例は必ずしもQ&Aの形ではなく、授業計画やブックトークの中にも存在するという指摘が印象に残った。

感想

第二部で清教学園の高校生の卒業論文が回覧されていた。「駅前で配っても恥ずかしくないものを」と片岡氏は学生さんたちに冗談めかしておっしゃるそうだ。パラパラとめくっただけですが、参考文献リストから調査をした様子が伝わり、引用のルールが守られ、段組みや章立ても分かりやすくが書かれていた。ちなみに卒論は図書館の蔵書になるそうで、それがとてもいいなと思った。

帰りの電車で、もし大学図書館でレファレンス事例を公開するとしたらどんなものがバズるかというブレストをしてみた。たとえば、大学史に関すること(これは実際に何回か受けたことがある)、大学図書館のコレクション事例、有名な卒業生の著作リスト、市民講座をしている先生のブックリスト…等々。

最後に私がお世話になったレファレンス事例を紹介。


【図書館】ハードカバーの表紙がベタベタになるという現象が発生している。更に、表面の塗料が溶け出して(... | レファレンス協同データベース

これは助かりました。

余談。

休憩時間で「ご自由にお被りください」という、れはっちの被り物や、茶話会で職員さんからのれはっちクッキー差し入れなど、関西館のみなさまの、れはっち愛が素晴らしかったです。今さら知ったけれど、壁紙、ブックカバー、うちわ、ペーパークラフト、れはっち素材集といったこのページが充実してて面白かった。

レファレンス協同データベース事業 刊行物等