情報組織化研究グループ月例研究会「イタリアの目録規則REICATの概要」
日時:2015年10月31日(土) 14:30~17:00
発表者 :石田康博氏(名古屋大学附属図書館)
しばらくブログを書いていなかったので、リハビリ代わりに参加してきました。
2009年にFRBRを適用させた初の目録規則として有名な、REICAT(レイカット)について、イタリアの図書館事情とともにご紹介いただきました。
イタリアの図書館
特徴的な点は、50以上の国立図書館があるという点。その内訳は3種類に分類される。
- biblioteche nazionali centrali
- biblioteche nazionali
- 7館
- biblioteche statali
- 約50館
- 「nazionali」と「statali」という違いがある
- 大学の所属を離れて、文化省の直轄の大学図書館もある
- イタリアの大学は街中に学部が点在し「キャンパス」がないため、中央図書館はがなく、学部図書館が中心だそうだ
この他に、自治体が設置する図書館が存在します。石田氏は趣味でイタリアに行くことが多く、旅と一緒に図書館を訪れてきた積み重ねが、今回の発表の元になっているそうです。
イタリアの目録規則
ここから本題に入ります。まず、目録規則の歴史から紹介されました。
- 18-19世紀:詳細は不明であるが、フィレンチェ国立中央図書館の規則が統一後のイタリア最初の規則
- 著者基本記入方式
- ICCU(Istituto Centrale per il Catalogo Unico):1956年
- 目録規則の作成機関+書誌情報中央研究所
- RICA(Regole italiane di catalogazione per autori):1976年(その後改訂あり)
- SBN(Servizio bibliotecario nazionale)
- イタリアの総合目録+書誌ユーティリティ
- マニュアル(978-8871070360)
- REICAT(Regole italiane di catalogazione):2009年
http://www.iccu.sbn.it/opencms/export/sites/iccu/documenti/2015/REICAT-giugno2009.pdf
- ISBDイタリア語訳(978-8878120075):2009年
- FRBRのイタリア語訳:2000年
- FRADのイタリア語訳:2010年
- RDAのイタリア語訳開始:2014年
- イタリアのライブラリアン御用達のハンドブック
- パンフレット、ちらしの目録規則も存在する
REICAT
世界初のFRBRにもとづく目録規則です。中をみると3部構成で、例示がかなり細かく掲載されていました。全650ページ以上にのぼる大作ですので、全体をざっと概観します。特に第二部以降はFRBRを倣っているように感じました。
- descrizione bibliografica e informazioni sull’esempla(書誌記述および個別資料の情報)
- Opere e espressioni(著作と表現形)
- Responsabilità*1
第一部
- 書誌記述の目的と書式
- 書誌記述の一般規則
- 情報源
- 記述のエリアとエレメント
- 分冊出版物の記述および分出記述
- 非出版文書の記述
- 個別資料に関する記述
- 書誌を作成する単位に対して、何を記述するのかを例示している
- 資料種別も記述しうる全ての種別に対して記述規則をまとめている(半分近くが一部に割かれている)
第二部
- 著作と表現形
- 統一タイトル
- 同一著作n表現形
- 過去に存在した著作に関連する新たな著作
- 出版物中に含まれる著作および統一タイトルの適用
- 他のタイトルからのアクセス
- 第二部では、著作-表現形-体現形-個別資料の詳細な説明
- 統一タイトルには識別子がつけられる*2
- 例:Codice di procedura penae<1931>←この部分
- 多言語の版が存在する場合は、イタリア語であるという識別子は省略
- 他の国ではどうなのだろ?これは一般的?
- 従来よりも規定が細かく、無著者名古典、法令、音楽作品などに限定せずに全著作に拡大
石田氏は音楽に関心があるとこことで、音楽作品の目録を例示されていました。印象的だったのは、歌曲の標目として、イタリアでは伝統的に作詞者を標目にしているそうです。これはISBDやAACRとは異なっていますが、RDAでは作詞者を標目にしているそうで、ここに来て偶然?にも揃ったそうです。
第三部
- Responsibilityの関連
- 個人名の統一標目形
- 団体名の統一標目形
- 著作のResponsibility
- 特定の表現形のResponsibility
- 出版および制作のResponsibility
- 個別資料のResponsibility
- 著作/表現形/体現形/個別資料のそれぞれのレベルに対してResponsibilityが存在する
- 著作に対する原作者、表現形に対する翻訳者、体現形に対する出版者、個別資料に対する所蔵館…等々
- Responsibilityには2つのタイプに分かれ、著者のResponsibilityとその他のResponsibilityは区別される
- 標目のタイプと対応した、3つの段階が存在する
- 関連して、標目の選定にも言及されている(15章)