klarer-himmel13's diary

(旧)図書館の中では走らないでください!から

CRIS (Current Research Information System)

気になったキーワードを調べる短記事シリーズ。

CRIS (Current Research Information System)について、なんとなく「研究者情報データベースでかつ、色々とできるもの」というぼんやりとした理解しかしていなかったので、あらためて文献を読み直してみた。

英語版のWikipediaによると

A current research information system (CRIS) is a database or other information system to store and manage data about research conducted at an institution


Current research information system - Wikipedia

現役の各研究者の業績、その他の情報を収集・管理するためツール、と定義してある。
カレントアウェアネス・ポータルで確認できたなかで初登場は2013年。

Elsevier社がニュースレターで研究データ管理特集 | カレントアウェアネス・ポータル

機関リポジトリとの相互運用性の文脈で語られることが多いなという印象。相互運用には程遠かったけど、機関リポジトリの担当だった頃(2010-2011)に自学の研究者DBにリポジトリへのリンクを貼っていたなぁというぼんやりとした思い出。
その後も、オープンアクセスリポジトリ連合(COAR)とeuroCRISCRISの提携、と機関リポジトリは両輪のような展開を遂げ、2017.2.11現在のカレントで確認できた最新記事(2016.4のもの)も

E1791 - 欧州におけるCRISと機関リポジトリの連携の現状 | カレントアウェアネス・ポータル


ところで「Current Research Information System」とGoogleで検索した時に、最初にランクしているのがWikipediaの記事ではあるが、何個か下にFree UKSG webinarもヒットする。

www.slideshare.net

ここを読むと「Wikipediaでは物足りない!」と。スライドを私が理解できた範囲ではキーワードは「Integration」なのかと感じた。スライド中に何度もこの単語は登場する。研究情報は研究者自身の履歴書であり、業績であり同時にその研究分野や大学そのものの履歴書かつ業績でもある。そしてこのさまざまな研究情報を統合したり、かつ機関リポジトリやORCIDなどの他のシステムと連携することで、CRISがユーザの価値を高めていく。ここでの価値とは、研究者のマッチングや業績評価のための分析として有用であるという意味である。

CRISの必要性について、euroCRISのAboutに詳細に記されている。

Why does one need a CRIS? | euroCRIS

いくつかの文献によると、CRISは1960年代に研究管理のために登場*1*2とあった。

1980年代にはプロトタイプシステムでCRISの相互運用が始まり、それが後にCERIF (Common European Research Information Format)へと発展した。CERIFが何かのかというとうまく説明できないが、どうやらCRISの相互運用性を技術的に担保するモデル、のようだ。2002年、CERIFの開発・管理のためにeuroCRISが登場し、この年から毎年、Conferences on Current Research Information Systemが開催されている。

euroCRISのように非営利組織によるCRISもあればElsevierのPureのような製品も存在する。

www.elsevier.com

Pureの導入大学を見ていると「Research information system (RIS)」という表記を見かけることがあり、Currentの有無はどこで別れるのだろう?と不思議だった。そして今も解決していない…

Wageningen UR replaces Metis with Pure - WUR

*1:Jeffery, K. G., A. Asserson, and D. Luzi. "State of the Art and Roadmap for Current Research Information Systems and Repositories. euroCRIS White Paper." (2010). http://www.irpps.cnr.it/it/system/files/PositionPaperRoadMap20100610.doc

*2:Scholze, Frank, and Jan Maier. "Establishing a research information system as part of an integrated approach to information management: best practice at the Karlsruhe Institute of Technology (KIT)." Liber Quarterly 21.2 (2012). http://doi.org/10.18352/lq.8019