情報組織化研究グループ月例研究会「東アジア地域における書誌コントロールの動向に関する国際フォーラム」
日時:2016年1月9日(土)
発表者:
夏 翠娟 氏(中国・上海図書館システム・ネットワークセンター)
「中国における書誌コントロールの現状:特にBIBFRAMEとLODに注目して」朴 志英 氏(韓国・漢城大学知識情報学部)
「韓国における書誌コントロールの動向:RDA, BIBFRAME, LODを中心に」渡邊 隆弘 氏(日本・帝塚山学院大学)
「日本における書誌コントロールの動向:目録規則を中心に」パネルディスカッション「東アジア地域における書誌コントロールの動向と今後」
パネリスト:夏 翠娟 氏,朴 志英 氏,渡邊 隆弘 氏
コメンテータ: 木村 麻衣子 氏(学習院女子大学)
※追記あり
http://josoken.digick.jp/meeting/2016/201601forum_flyer.pdf
日中韓の3名から各国の書誌コントロールの現況を紹介いただいた。
各発表には、LOD、BIBFRAME、RDAが共通するキーワードとしてあげられている。発表の導入として、田窪さんからそれぞれの説明がされた。
LOD(Linked Open Data)とはデータのウェブ、と定義できる。普段、目にするインターネットサイトが「文書のデータ化」だとすると、LODはリンク関係の意味が分かる(=セマンティックリンク)ため、コンピュータで活用できる。
BIBFRAMEとは、RDF方式でマークアップされたものである。MARCフォーマットのマークアップ方式が現在の状況にそぐわない点も多い。FRBR化されているかは意見が別れるそうで、ある面では、BIBFRAMEはよく分からない子らしい…
RDA(Resource Description and Access)はAACR2の後継と言われている。あくまで規則ではないので、完全な意味では後継とは言えない。FRBRにもとづき、その影響は英語圏を越えてデファクトスタンダードになっている。
中国における書誌コントロールの現状:特にBIBFRAMEとLODに注目して
- 中国の現状
- 目録規則について、中国語文献は『中国文献目録規則』、西洋言語はAACR2とRDA
- 『中国文献目録規則』はRDAを踏まえて改訂予定(詳細は未定)
- CNMARCは公共・大学でも使用している
- 媒体ごとに国家規格(GB/T~)
- 目録規則について、中国語文献は『中国文献目録規則』、西洋言語はAACR2とRDA
- MARCについて
- UNIMARCにもとづく
- 1992年:CNMARC
- 中国語文献はCNMARC、西洋言語についてはMARC21
- 目録規則について
- DCについて
- デジタル図書館標準・規格建設プロジェクト(中国科学技術部重要プロジェクト=科技部重大项目)
- 参照できるサイトはこれだろうか?→http://www.nlc.cn/newstgc/
- CALISと国家図書館も上記の基準に倣う
- デジタル図書館標準・規格建設プロジェクト(中国科学技術部重要プロジェクト=科技部重大项目)
- RDAについて
- 中国ではRDAに関する論文が400くらいあるらしい(2014年以降)
- cnkiで主題を「RDA」にすると2015(223), 2014(221)
- 2013年:上海図書館がOCLCに参加
- 2014年:CALIS联合目录RDA实施声明
- 2015年:CALIS联合目录外文编目RDA政策声明
- 日露以外の外国語文献の目録作成にRDAを適用するようという呼びかけ
- 中国ではRDAに関する論文が400くらいあるらしい(2014年以降)
- インター年と時代の書誌コントロール
- LODについて
- 典拠データの研究>書誌データの研究
- データ公開が目的ではなく、書誌データの構造化が主たる目的
- BIBFRAMEについて
- 中国での評価は様子見
- RDAとの関係性が曖昧
- CNMARCからBIBFRAMEに変換しにくい
- CNMARCはUNIMARCにもとづいている。一方、アメリカなどの先行研究はMARC21からの変換がほとんどなので参照例が少ない
- 上海図書館のとりくみ
- 2014年:家譜
- 家譜のデータ化により、著者の親類関係についての新発見も(デジタル/ヒューマニティの実践)
- 家譜のデータ化は、家譜同士のデータ化or家譜内のデータ化なのか?という質問が渡邊先生から出たのですが、回答をうまく理解できず。。
- 家谱文献地图 - 上海图书馆
- BIBFRAME2.0にもとづき、他の基準(FOAF、Schema.org、Time、GeoNames)を吸収=オントロジーのデザイン
- 2015年:盛宣怀档案
- 2015年:公共数据集(公共データ)
- 2016年:规范(典拠データ)
- 2016年:书目(書誌データ、5月予定)
- 図書館以外の研究者によるデータ編集ができるプラットフォーム
- UGCによるクラウドソーシング式インデキシングプラットフォーム
韓国における書誌コントロールの動向:RDA, BIBFRAME, LODを中心に
- 目録規則について
- MARCについて
- 国立中央図書館資料組織研究グループ
- KORMARCウェブ版
- RDAに関する調査と分析、翻訳を担当
- 韓国図書館協会と将来的な協力を予定
- LODについて
- 国立中央図書館による、書誌、典拠、著者データのLOD化
- KORMARC,MODS,DVMSデータをRDF化
- 2015年12月より、所蔵館検索、KDC主題検索、地図上での所蔵館表示
- 日中韓電子図書館イニシアチブ(China-Japan-Korea Digital Library Initiative: CJKDLI)
- 韓国LOD発行機関協議会
- 韓国内の主要LOD機関のデータ連携
- Linked Dataオントロジーの構成
- BIBFRAMEについて
- 国家レベルでの活動はないが、研究・検討がされている
- 参考:朴志英. 2013. 次世代書誌記述としてのBIBFRAMMEのモデル研究. 韓国情報管理学会学術大会論文集. 101-104
- 朴さんの現在の研究は、公共図書館のローカルデータを使用して、図書館の情報サービス履歴と書誌情報の構造化・共有
- ローカルデータとは、展示会・読書会・レコメンドなどのそれぞれの図書館で行われたイベントのデータ
- 参考:박지영. 2015. BibFrame 모형을 이용한 공공도서관 로컬데이터와 서지데이터의 연계 방안. 2012~2014년도선정 인문사회분야 신진연구자지원사업 결과보고서 제출대상자
- 高久さんから、ローカルデータの標準化について質問があった。朴さんから、試験的にローカルデータをテーマ別にタイプ分けしたことがあるとの回答があった
- 国家レベルでの活動はないが、研究・検討がされている
日本における書誌コントロールの動向:目録規則を中心に
- 日本のおける書誌コントロールの現状
- 日本目録規則について
- 新NCRについて
- NCR改訂作業は、日本図書館協会目録委員会(2010-)と国立国会図書館収集書誌部(2013-)
- 2017年新規則を公開予定
- サイトで条文案を公開中
- FRBRを基盤とする
- 典拠コントロールの位置づけの明確化
- 著作の典拠コントロールの徹底
- 資料の物理的側面と内容的側面の整理
- 関連の記録重視
- RDAへの対応重視
- 資料種別ごとの章立てはとらない
- エレメントの増強
- 語彙リスト
- コーディングは規則に含まず
- 日本における出版状況を配慮してRDAと異なる箇所もある
- 新NCRにあたって、著作の典拠コントロールの徹底、何を作成者とみなすかが課題
- フロアから作成者について、著作権との関係を指摘されていた。この辺りはRDAも避けているとか
- 「目録規則」という名称は残す?
- FRBRについて
- 発表直後から一定の注目
- ICP(国際目録原則)
- IME ICC4(2006,ソウル)に参加
- 国際目録原則覚書(日本語版)
- RDA
- ワークショップや紹介書籍が発行
- 適用はNDLにおける洋書のみ
- 日本における書誌フレームワーク
- BIBFRAMEについて
- 紹介や問題指摘の論考がある程度
- 新NCRの運用に向けてフレームワークを定めなくてはならない
- NACSIS-CATは2020年にシステムの大規模見直しを予定
- LODについて
- 国立国会図書館
- 国立国会図書館の書誌データ作成・提供の新展開(2013)
- 使う・つなげる:国立国会図書館のLinked Open Data (LOD) とは | 国立国会図書館-National Diet Library
- NDLサーチ(書誌データ)、Web NDL Authorities(典拠データ)、ひなぎく(震災関連データ)
- 国立情報学研究所
- 個別機関での今後は?
- 目録規則側での対応は?
- 国立国会図書館
東アジア地域における書誌コントロールの動向と今後
木村さんから全体のまとめ。各国の発表の概要、RDAだけでは目録は作れない、LOD化する流れ、その一方でBIBFRAMEはまだこれから。そして、合理化・効率化の流れ=楽になることではない、考えること増えていくということが指摘された。
発表者同士の質疑応答は、中国語で質問→日本語に翻訳→日本語で回答(朴さんは日本語で発表されていた)→中国語に翻訳という、流れだったのでところどころ文意が取れていない箇所もあるので、ご容赦ください。
◯夏さんに寄せられた質問
◯朴さんに寄せられた質問
- 2011年にLOD化したとき(BIBFRAME発表前)のモデルはFRBRにもとづいているか?→インスタンス(manifestation)にもとづいている(ここの文意が取れず…)
- 典拠コントロールは同期されている?→書誌と典拠データは手作業
- 典拠データ・同姓同名はどうのように同定しているか?→生没年、漢字、ハングル、時代、父母名、職名、贈り名(古典籍は著者コントロールは限界があるのかもしれない…)
- オントロジーと書誌コントロールとの関係は?→全体の枠組み(構造化)と関係、スキーマとほぼ同義(ここの文意が取れず…)
オントロジーについて、質問をされたのは渡邊先生だったのだが、中韓の発表ではオントロジーという用語が登場し、日本では書誌コントロールの文脈ではあまり聞かない。フレームを、スキーマを作ることとどのような関連があるのか?という内容だった。お二人の回答を受けて、エレメントのRDA化とオントロジーは通じているのではないか、エレメントの定義をコンピュータに理解させているのではという補足があった。
木村さんから、RDAとBIBFRAMEの課題は典拠データの不備であり、特に統一書名典拠が課題になるという指摘があった。渡邊先生からは、日中韓に共通する課題として古典籍を指摘し、古典籍はRDAでカバーできるのかという疑問が出された。FRBR化するには統一タイトルが必要。現行は日中韓とも本タイトルを統一タイトルとみなしていることが多い。夏さんから中国で統一タイトルの典拠作成を進めているとの紹介があった。フロアから、国文学研究資料館の事例が紹介され、古典籍は突き詰めると「昔のものはよく分からない」となってしまうらしい。国文学研究資料館では統一書名タイトルを作って公開しているが、それには専門家に確認するが伴うことも。
フロアからの質問に、日中韓でLODを通じて共有できないか、図書館コミュニティのみならず博物館や研究者などの図書館外で活用できる可能性について、言及があった。その他に古賀先生から、著者名典拠についてORCIDのような研究者でコントロールする可能性について質問があった。夏さんからCNKIで著者情報とh-indexの連携、百度学術、北京大学で固有識別子を与える試みもあるとの回答があった。
質疑応答のなかで「この大量のデータで何をしたい?」という問いかけがあった。夏さんからEric Millerの「From MARC to BIBFRAME / What could we loss? What would we get?」という言葉が紹介された。