読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

klarer-himmel13's diary

(旧)図書館の中では走らないでください!から

「日本目録規則(NCR)2018年版」(仮称)関西検討集会

図書館 行ってきました

日時:2017年3月5日 12:30-16:30
会場:大阪市立中央図書館 5階大会議室
内容:

  1. NCR2018年版の概要(渡邉隆広 目録委員長)
  2. 条文案各章の概要
    1. 体現形・個別資料の属性(野美山千重子委員 トーハン図書館事業部)
    2. 著作・体現形の属性とアクセスポイント(木下直委員 東京大学
    3. 個人・家族・団体の属性(河野江津子委員 慶應義塾大学
    4. 関連の記録(村上遥委員 東京外国語大学
    5. データ事例(田代篤史委員 国立国会図書館
  3. 「新NCRへの期待と要望」和中幹雄氏(情報組織化研究グループ)
  4. 質疑・討議


NCR2018年版(仮称)


改めてタイトルを見ると、字面が重々しいですね。
というのも「目録」というワードが残ったのが意外なような、そうでもないような、NCR2018(仮称)。
記録担当の方々がきっちり記録されていたので、そのうちちゃんとしたものが公開されそうですが、個人の日記として頭を整理するために書き残しておく。

日本図書館協会目録委員会と国立国会図書館収集書誌部での検討の成果として、2017年2月に発表されたNCR2018(仮称)について、ウェブサイトを通じた情報公開・パブリックコメントの募集も行われているが、集会というかたちで直接に説明や質疑ができる機会をということでお邪魔してきた。まずは、渡邉委員長から概要と今後のスケジュールが説明された。

2017.5 東京集会
2017.7まで パブリックコメント募集
2018.3 PDF(完成版)を公開⇒冊子体でも刊行

となっている。これから1年かけて完成へと向かう。パリ原則とISBDにもとづいたNCR1987年版から30年、FRBR(1997)から20年、RDA(2010)から7年。Web環境に適するために、NCR2018年版はRDAに倣ったものへと大幅な改訂がされる。これらの特徴は大きく13点挙げられる。

  1. FRBR等の概念モデル
  2. 典拠コントロール位置づけ
    1. 著作を個人を独立した実体⇔従来は標目参照のみ
  3. 全著作の典拠コントロール
  4. 内容的側面(著作・表現型)と物理的側面(体現形・個別資料)の整理
  5. 関連の記録
  6. 書誌階層構造
    1. NCR87を維持(ただし書誌単位は廃止)
  7. エレメントの設定
    1. 全てエレメント⇔従来はエリアの中にエレメント
  8. 語彙のリスト
  9. 意味的側面(エレメントの記録の範囲と方法)のみを扱い、構文的側面(記録方法、記述文法)は扱わない
  10. 機会可読性の向上
  11. アクセス・ポイントの言語・文字種と読み、排列
    1. 日本語は漢字仮名まじり形、排列の規定は設けない
  12. RDAとの互換性
  13. NCR1987との継続性


抽象度の高めなワードが飛び交うため、用語集へ期待や翻訳の精緻さが求められる場面が多いように感じた。配布資料には用語集と索引があったので、完成版にむけた用語集にも期待したい。

規則の構成はFRBRの実体の沿ったものとなっている。なお、RDAでも未刊である箇所はNCR2018でも保留となっており、目次がすべて揃う訳ではないそう。

キーワードは、実体、属性、アクセス・ポイント、関連。これを噛み砕きつつ、集会の概要を記録していく。

実体というのはFRBRの概念の一つであるが、書誌情報において重要と思われる概念を指す。具体的には、著作・表現形・体現形・個別資料、個人・団体・家族、概念・物・出来事・場所である。これらの実体間がどのような関係になっているのかを示すのが関連。


https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/8/80/FRBR-Group-1-entities-and-basic-relations.svg

この有名な図にある楕円が実態、矢印が関連である。

目録を利用するユーザ(この場合は図書館員や利用者のみならず、もっと広い意味でのユーザである)にとって、もっとも重要な実体が、体現形である*1。これは従来の目録をとる対象とほぼ同義。この体現形の中身に相当するのが属性である。属性を表すものがエレメントと呼ばれる。

体現形の属性を表すエレメントには、タイトルや責任表示、出版表示などがある。これらのエレメントはすべて同等というわけではなく、コアエレメント(必須)が定められていたり、エレメント・サブタイプ(例:本タイトルに対する並列タイトル)サブエレメント(例:出版表示における出版地や出版者)といった階層を有したりする。

RDAにそっているとは言え、日本語独自の問題(ヨミや併記された語句など)に対する処理などもあわせて紹介された。体現形の属性で特徴的な点として、タイトルと責任表示が別のエレメントとして扱われている点があげられる。しかしながら、本タイトルと責任表示が何度も繰り返されるような資料に対して、エレメント同士の関係を何かしら記述する文法がなければ(記述文法は規則の外であるが)ならないので、規則と同時に文法も同時並行していく必要がある。また、NCR1987との比較で言及されたのは、版表示と版次について。前者が「版に関する事項」、後者が「NCR1987の版表示」に該当する(ややこしい…)

もうひとつ、体現形の属性において特徴的なのは、資料種別ではなくエレメントごとにまとまっている点である。図書か雑誌かその他かによってエレメントが変わらない。これはキャリア種別を重要視しないという訳ではなく、むしろキャリアを表す粒度を細かくした結果である。キャリアは機器種別とキャリア種別との組み合わせによって表現される。従来、別レベルのものを一緒にしていたため、CD-ROMの地図資料が地図だとは分からないという不具合があった。NCR2018では、例えばCD-ROMの地図資料だと

(表現種別:静止画)、機器種別:コンピュータ、キャリア種別:コンピュータ・ディスク

となる。機器種別とキャリア種別は原則、1対1対応であるが、例外もあり。おそらくこのままユーザに提示してもなんのことかわかりにくくなる(例えば、絵本だと「表現種別:静止画、機器種別:機器不要、キャリア種別:冊子」)。図書館システム側で何かしらの工夫が必要だろうということだった。つまり、目録画面で「絵本」を選ぶと、自動的に各種別にセットするといった工夫が求められる。

体現形と個別資料と異なり、実態(実体ではなく)や従来の目録業務を応用して理解できる一方、著作と表現形を識別の対象ととらえる考え方は新しい。属性をエレメントで表す点は体現形と一緒である。著作については統一タイトルの標目というアナロジーでなんとなく理解できる。優先タイトルや著作の形式、日付などは統制形アクセス・ポイントに含まれ、著作の識別に用いられる。

表現形の属性やアクセス・ポイントというのがイメージしにくいが、表現種別(テキスト、静止画、楽譜、地図…等々)や日付や言語が統制形アクセス・ポイントとして、これをキーとして表現形の典拠コントロールに用いられる。一方で、表現形の識別子や出典などはアクセス・ポイントには含まれないが、表現形の典拠コントロールには用いられる。

著作・表現形・体現形・個別資料が第一の実体とすると、個人・家族・団体は、第一の実体を作る、行為者としての主体を表す第二の実体である。これらの属性も同様にエレメントを用いて表される。個人・家族・団体の優先名称は個人に対する典拠形アクセス・ポイントの基礎となる。ちなみにフロアからの質疑でこの「家族」に対してアーカイブの文脈では、familyの訳語としてふさわしくないという指摘もあった。それなら「ファミリー」ならいいのかとも思うが、一方で訳語がはまりきらなかった「イテレーション」(更新資料におけるある時点での状態)について、別の参加者から原語そのままなのはわかりにくいという指摘もあった。

話を個人・家族・団体に戻すと、団体の下部組織、附属機関の名称のみを優先名称とする点は、NCR1987と大きく異なる。また、共著について、各作成者を表す典拠形アクセス・ポイントとし、主要な作成者を選ぶのは別法としているが、RDAではこちらの方が本則として採用されている。このように各所でローカライズもされている。

最後のキーワードとして、関連。著作・表現形・体現形・個別資料をまとめて「資料」*2と呼ぶ。資料同士、あるいは資料と個人・家族・団体との関連は、主として識別子と典拠形アクセス・ポイントで表すことができる。

この資料についての関連もエレメントが設けられている。著作←表現形←体現形、著作←体現形の3つがコアエレメントである。記録の範囲は、派生、参照、全体・部分、付属・付加、連続、等価の関係を表現する。基本的には識別子と典拠形アクセス・ポイントで記録するが、継続誌や合本などは複合記述、構造記述、非構造記述でも表すことができる。例えば

  1. 継続後(著作):◯◯ジャーナル
  2. 『◆◆◆』(2006年刊)の改題・合本・加筆・再編集である。

上記1が構造記述、2が非構造記述に相当する。

構造記述での「継続後(著作)」は決まった語彙が存在する。それを関連指示子と呼ばれ、リスト化されている。関連指示子は階層化されている。また、適当な語彙がない場合、目録作成機関の判断でリスト外から語彙を採用しても良い。

資料と個人・家族・団体との関連でも関連指示子の細かいリストが用意されている。ただし、映画などはどこまでかけばいいのか、運用の実態が見えていないというのもまた然りである。

規則の段階なので運用までイメージしにくいのは最もであるが、実際には運用していくために、実際の運用を想定すると様々な課題も多い。表現形の典拠コントロールについて、範囲や詳細度が(表現種別、言語、その他?)分からない、たとえば翻訳者別に全てを典拠コントロールする必要はあるのか?という課題が残されたままである。

目録委員からの発表に続いて、和中氏から、規則への期待・要件、それにもとづく修正案が提示された。かいつまんでまとめると、書誌データに社会性をもたせること(MLAの外側)、論理的でない部分は分かりにくくなっているということだった。Creator訳語(作成者ではなく創作者)、「片仮名形」「漢字かなまじり形」「漢字形」ではなく、優先言語で表現する、ヨミのエレメント化およびオプション化、優先名称の言語(日本語か原綴か)は運用で決めたらいいのでは、姓名の区切りカンマの廃止(名姓のときのみ使用)、FRBR-LRMへの対応、NDL Web Authoritiesの共同作成などが提案された。個人的にはこの日唯一、NIIの名前を聞いたのがここだったのが印象に残った。

感想3点。1.規則である以上、定義、範囲、意味内容などの精緻さが求められるんだなぁとあらためて。2.オンライン資料の手薄さが指摘されたが個人的にはNCR2018では扱いきれる範囲ではないのかも…という気もした。ただ、だからオンライン資料のメタデータは考えないという訳ではなく、Dublin CoreとかDOIとかKBARTとか?と一緒の土俵に上る必要はあるのだとは思う。3.主要MARC3つは多いのかもしれない。。でも専門性が高い機関ではMARCでは物足りないのかもしれない。

*1:和古書・漢籍、初期印刷資料は個別資料を記述対象として、体現形の記述を作成

*2:この「資料」という訳語に対する違和感も指摘された。