klarer-himmel13's diary

(旧)図書館の中では走らないでください!から

「オープンアクセス,インパクトファクター,XML-Nagoya J Med Sci編集の現場から-」(『情報の科学と技術』65(8)より)

読んでみて面白かったので簡単にメモしておく。


蒲生英博「オープンアクセス,インパクトファクター,XML-Nagoya J Med Sci編集の現場から-」『情報の科学と技術』65(8)
2015. 08 特集= ISOと標準化 | 情報科学技術協会 INFOSTA


名古屋大学の医学分館に所属されている蒲生さんによる、名大の医学部で発行している学術雑誌(あえて紀要、ではなく)の編集作業について、プラットフォーム作りを中心に紹介されている。

Nagoya Journal of Medical Science

独自のホームページを作成し、OAとして公開されている。現在のところ、機関リポジトリと両方に登録されているそうだ。統計はどのように取得されているのだろう?

『Nagoya J Med Sci』の特徴の一つは、IF(インパクト・ファクター)。それによるとWoSに3年以上収録される必要があるという。その他にも、申請が受理されるために、投稿規定を整え、EndNote Output Styleを用意、DOAJへの登録などを経て、審査を通り、受理された。そして2013年より、IFがリリースされている。

トムソンには、年間2,000点近くが申請され、そのうち受理されるのは1割程度だそうだ。

ジャーナル収録基準 - トムソン・ロイター

もう一つの特徴であるXMLの作成に関連して、面白いなぁと思ったのは、PubMed更新について。もともとOA化される前からPubMedへの収録は行われていた。そしてOA化された後も、印刷物のときと同様にNDLにコピーして送り、NMLが索引化している。XMLを作成することで、結果としてPubMedへの登録も早くなる(PMC→PubMedへデータ更新を行うため)というメリットをもたらした。雑誌の発行後の3-4週間後にはPubMedに掲載されるようになったらしい。

話は前後するが、PMCへの登録はXMLがマストらしい。

Add a Journal to PMC

3. PMC's Technical Requirements

Required Files

A journal must provide PMC with the full text of articles in an XML (eXtensible Markup Language) format that conforms to an acceptable journal article DTD (Document Type Definition). PMC does not accept articles in HTML format.


論文の最後でも言及されているが、今後の課題としてDOIを他の紀要論文への付与という点も言及されていた。
たとえば、静岡大学さんの発表資料を読んでいると「2大学の機関リポジトリで重複して公開」している『教科開発学論集』は、ウェブサイトとIRで公開されている『Nagoya J Med Sci』と似ているのかなぁと思ったり。

静岡大学学術リポジトリのDOI付与
http://www.nii.ac.jp/irp/event/2014/OA_summit/docs/1_04.pdf

Student CASPワークショップに参加してきた

第十回Student CASPワークショップ
日時:2015年6月21日
場所:神戸薬科大学
使用論文:Withdrawal of inhaled glucocorticoids and exacerbations of COPD. New England Journal of Medicine, 371(14), 1285-1294.

CASP(Critical Appraisal Skills Programme)の目的は、医療や保健の現場で判断をする職種に就いている人だけでなく、その判断に関わるすべての人が、その根拠をわきまえた上で判断し行動できるように支援することです。 CASPは英国オックスフォードでの市民のための健康支援活動(PHRU: Public Health Resource Unit)の一部として始まりました。この理念に基づく行動を広く提供しています。このCASPの理念と活動を国際的に広げることを目的にしたネットワークがCASP internationalです。CASP JapanはCASP internationalの支援を受けながら日本を対象に活動しています。 (http://casp-japan.com/より)

CASPワークショップでは、その手法や形式に一定の形があって、どんな初心者であっても、どんな背景を持った方でも、楽しめる形になっています。実際に英国で開業医や病院の医師単位から、訪問看護婦、一般市民、図書館司書、助産婦、更にこれらの複数の職種からなるチームそのものを対象にしてワークショップが全国各地で開かれています。(当日資料より)

EDMと図書館(職員)の関わりを知りたくて、誘っていただいたのをきっかけに、おじゃましてきました。ワークショップの内容は後日、報告書がまとめられるので、どんな準備をしたのか、どのように感じたかをメモ。

5月下旬:参加を決める
5月下旬:使用論文の連絡を受け、とりあえず印刷する。アブストラクトだけに目を通す
6月上旬:チェックシート(これに沿って議論していく。論文を読む目安)
6月2週目:チェックシートにしたがって本文を読み始める(全てはできなかった…)

こんな感じ。ど素人なので、補助資料として以下のものを紹介してもらった。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン

COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン

当日、参考になる情報源をいくつか紹介いただいた。
医学書院/週刊医学界新聞(第2971号 2012年03月26日)

GOLD - the Global initiative for chronic Obstructive Lung Disease


A randomised cross-over trial investigating the ease of use and preference of two dry powder inhalers in patients with asthma or chronic obstructive pulmonary disease. Expert opinion on drug delivery, 10(9), 1171-1178.

同じ班には同業の先輩の他、チューター、薬剤師、薬学部の学生さんがいらした。EBM概論、RCT(今回扱った試験名)、呼吸器疾患のについてのレクチャーをはさみつつ、半日かけて1本の論文を検証しながら読み、発表、他班の解釈を聞くというセットを3回繰り返し。

EBMのステップに沿って検討する。
step 1:疑問(問題)の定式化
step 2:情報収集
step 3:情報の批判的吟味
step 4:情報の患者への適用
step 5:step 1~step 4のフィードバック
ワークショップでは、ステップ2をショートカットした5つのステップをグループワークで取り組んだ。

図書館とEBM、私が前もって読んだのはこの辺り。

ci.nii.ac.jp
EBM・診療ガイドライン
EBM実践支援ツール|奈良県立医科大学附属図書館
日本医学図書館協会の診療ガイドライン作成支援事業に参加して(奈良県立医科大学附属図書館. 鈴木 孝明)

CiNiiの最古記事はci.nii.ac.jp

15年前の記事。医学図書館歴2ヶ月が、このようにワークショップにふらっと参加させてもらえるのは、この積み重ねの上に成り立っているのと、そして医学という学問の裾野の広さなのかなぁと。

ワークショップは全部で8時間弱くらい。未知の世界の話を聞いて、自分なりに理解するのは、楽しいと同時にけっこうハードだった。専門家のとお話をしっかり聞くというのは、物凄く訓練になった。たぶん、異なるバックグラウンドを持つ人間がどうやって連携するのか、というのをシュミレートする場なのだと感じた。チューターの先生や、他の参加者もかみ砕いてお話いただいてありがたかった。

コーディネーターの高垣先生とちょっとだけお話させていただいた。仕事の現場で何ができるかなぁとか、どんなおしながき(我々が何者で何ができるのか)を提示できるのかなぁという思いが横切った。

『次の本へ』連続トーク ―古川日出男X松原隆一郎 《神戸と東北──2つの被災地を考える本の話》

日時:2015年4月26日
場所:古本屋ワールドエンズ・ガーデン 
登壇:古川日出男氏、松原隆一郎

d.hatena.ne.jp

小説家と社会経済学者。福島と神戸。東日本大震災阪神・淡路大震災をクロスさせた2時間。

神戸に新しく誕生した苦楽堂さんから昨年、出版された『次の本へ』。84名が1冊の本を紹介し、次の本を紹介(なので合計2冊)を紹介するという企画の本。

次の本へ

次の本へ

http://kurakudo.co.jp/

登壇者のお二人は上記の執筆者である。
トークの内容を書き起こすというよりも、簡単なメモを。

お話の背骨として「まち」と「(記憶の)継承」があったように感じた。最初にはじめて神戸に来たという古川さんから、神戸の印象が語られる。山と海、3つの私鉄、エキゾチックなものとの混在…etc。

冬の桃―神戸・続神戸・俳愚伝 (1977年)

冬の桃―神戸・続神戸・俳愚伝 (1977年)


それを受けて神戸出身の松原さんが語る、大正時代(お祖父様の物語)、1970年代、阪神・淡路大震災、震災後。幼い日々に過ごした怪しさとクールさが同居していたという話。そして神戸を離れ毎年のお墓参りで「定点観測」したなかで感じた、怪しさ(いびつさ)を失って(復興の過程で残さなかった)いく街。

ここで、東北の復興はどうあるべきかという話題に移る。例えば震災遺構。誰のために残すのかという問題がある。地元の人にとっては怖くて歪なものである震災遺構を残すという提案は、時として人々を深く傷つける。その一方で、神戸の街には震災遺構と呼べるものは殆ど無い。人と防災未来センターや北淡震災記念公園における野島断層、神戸港震災メモリアルパークなどはあるものの、地震の規模や範囲からするとごくごく少ない。また、原子力発電所をどうすべきか。原子力発電に関わる技術をどうやって継承するのか。

お話のなかで「イメージ」というキーワードが何度も使われていた。例えば明治維新について。日本の近代化は、その実態(現実問題としてたくさんの血が流れた)とは別に、政治的、戦略的に良い・ポジティブなイメージが持たれている。例えば東京オリンピック、例えば原子力発電所、例えば復興事業…などなど。

政治的、戦略的に良い・ポジティブなイメージ、はそのまま、まちづくりにスライドして語ることもできる。地方都市の駅前がどことなく似てしまう、怖くていびつなものが再開発から抜け落ちてしまう、クリーンなイメージで蓋をされてしまった街。

「イメージと歪さ」と同じようなアナロジーとして登場した「数字と文学」。イメージを戦略的に使うことの壊さや力に対向するのは「個人の思い」だと古川氏は述べる。文学はそこに働きかけると。古川氏は「考え方を変えさせたら文学の勝ちだ(価値だ?)」とも。

街の話に戻す。古い景色がなくなっていくことを決して否定的にとらえるものではない。復興は構成員をリセットさせるという、両面を持つ。大切なのは、明るい面と暗い面を併せ飲むこと。松原氏「お弔いを上手にしてほしい」

個人的に「継承の仕方」が印象に残った。震災遺構、語り部、文学…などなど残し方は様々であるが、古川氏が「いびつであることで人々の関心を引くことができる」とおっしゃっていたのが印象に残った。悲しみは誰にも共感されない個人的なものだからこそ、という指摘は「保存し残すこと、継承すること」の難しさとだからこそやるべきなのかなぁと。他にも小説家として、言葉の力についての指摘も。近刊としてこのような本が。

女たち三百人の裏切りの書

女たち三百人の裏切りの書

来年には平家物語も予定されている。1000年の時をつなぐことができることば。

松原氏は昨年、このような著書を出されている。お祖父様の蔵書を保存するための書庫を建てる、という記録と家族の物語。蔵書を残す、仏壇をしつらえる、ルーツをたどることを通じて、家族の物語を継承している。

お話の途中で、参加者に向かって「神戸の復興は完了していますか?」という問いかけがされた。質疑応答で発言された方から「街の復旧は終わったかもしれないが、負の遺産が残っている」というお返事があったり。

普段は残すという行為について、素朴に考えている所があるので、そこを問いなおす内容が新鮮だった。

第11回レファレンス協同データベース事業フォーラム つながる図書館の情報サービス:「調べる方法」の公共性 #crdf2015

第11回レファレンス協同データベース事業フォーラム つながる図書館の情報サービス:「調べる方法」の公共性

日時:平成27年2月19日(木)14:00~17:30
会場:国立国会図書館 関西館


第11回レファレンス協同データベース事業フォーラム「つながる図書館の情報サービス:「調べる方法」の公共性」 - Togetterまとめ



USTREAM: crdf2015: 第11回レファレンス協同データベース事業フォーラム「つながる図書館の情報サービス」の中継です。事業サポーターにより運営しています!. その他...

Ustreamによる中継があるので書き起こしのようなことはせず、ゆるっとまとめていく。

最初にレファレンス協同データベースを知ったのは、(おそらく)2009年のARGカフェ&フェスとだった。

持ち寄りのお弁当になぞらえた紙芝居が、とても印象的でよく覚えている。

そこから6年、レファレンスに関わるようになったものの、いまいち使い込めていないのを一念発起して、初参加。

レファレンス協同データベース事業フォーラムは11回め。フォーラムの中で、どなかは忘れてしまったが「ようやくここまで来た」と言われたテーマは「調べる方法」の公共性である。

第1部 提言「つながる図書館の情報サービス」

「図書館における情報発信」

「図書館における」と冠しているが、図書館の外でジャーナリストとして活躍されている猪谷さんが見た、昨今のSNSによる情報発信のトレンドを概観していただいた。つながる書館、といえば今や猪谷さんの代名詞のような存在かもしれない。

つながる図書館: コミュニティの核をめざす試み (ちくま新書)

つながる図書館: コミュニティの核をめざす試み (ちくま新書)

mixiGREEYahoo!知恵、ブクログFacebookFlickrInstagramとめまぐるしく移り変わるSNS、それらを補完するようなTogetterNAVERまとめ。ニコニコ動画、個人での動画配信がより簡易になったUstream、LINE、バイラルメディアと状況はますます複雑化する。

それに伴い、図書館の情報発信も変化する。キーワードはBUZZ。例がいくつか挙げられた。


Flickr: nyplphotobooth's Photostream

東京外国語大学図書館で読める おいしい本 (murakamiharuka) - ブクログ

印象に残ったこと。

  • 普段、ニュース記事を執筆されているときにタイトルの付け方に注意を払っていること(バズりやすい、分かりやすい、クリックしたくなるものを)
  • ニュース記事にしやすい形でアップすると助かる(動画を公開するにもYoutubeなどembedしやすいものを)

第二部の質問時間で寄せられたもの

  • アカウントのキャラ作り
    • 企業アカウントを参考に。担当者の個性に頼ってもいい。少人数で担当するほうがキャラが作りやすい
  • バズるためには?
    • まずは自分が面白いと思うかどうか。リアルタイム検索を利用してトレンドを把握する
オープンデータと図書館

大向先生によるオープンデータの文脈における図書館。それは単なるデータの公開にとどまらず、図書館で生み出した知識をオープンにするという一つ先を見据えてのご発表だった。

オープンデータは、近年、注目と政策として推進されている。オープンガバメントの手段として公共性の高い情報を公共セクターが開放する気運は、欧米を筆頭に世界中で高まっている。

Open Government Initiative | The White House

DATA GO JP

オープンデータになっているか度ランキングまでもある。

Place overview | Global Open Data Index by Open Knowledge

日本の自治体の現況
日本のオープンデータ都市マップ

このフォーラムもその一環であるインターナショナルオープンデータデイ。
インターナショナルオープンデータデイ2014 | ハッシュタグは #oddj14

翻って図書館のオープンデータ。ひとつは、書誌・所蔵・典拠といった目に見えるデータである。これらは過去から現在にかけて、世界各地で様々な取り組みがされている。そのことにより、これらの取り組みがリンクされてつながっている。

例えばNDL Authorities→LCDへ。NDL Authorities→Wikipedia日本語→Wikipedia英語版へ。NDL Authorities→VIAFへ。その他にDDCはオープンデータになっているらしい。
Dewey Decimal Classification / Linked Data

NDCもそうなったらいいのに。

このような見える情報は、情報の多様化に晒されている。図書館以外にも本の情報を扱うメディア(出版社、オンライン書店検索エンジンソーシャルメディア)はたくさんあるからだ。

一方、レファレンス協同データベースのデータは、目に見えない情報と言える。つまり、情報そのものからは知り得ない情報であるし、書き手(図書館)の意図や編集などが入った創作物である。~の代わり、~ではないという事実は、情報そのものからは言及しにくい。こんな調べがあるらしい。

このようなレファレンス事例が集まったデータベースは、図書館が作る知識とも言える。

知識をつくる図書館の事例として、

ししょまろはんラボ
cheese-factory.info
Wikipediaタウン

印象に残ったこと

  • 図書館が何者であるかを伝えるのに「知識をつくる」という視点が面白いなと思った
  • それはSNSでのキャラ作りとも通じるのではないかと思う

第二部での質問

  • 図書館で情報を発信する際に自らで加工するほうがいいのでは?
    • 実際問題、技術や人材不足。ならば技術を持つ人をいかに巻き込めるかと言う視点に
  • レファ協のデータ(聞き取れず…)
    • 本のリンク、IDの重要性。逆引きが可能になる
図書館知の共有

小田先生からは、レファレンス協同データベースから、レファレンスそのものを考えなおす視点をお話いただいた。

過去の文献においても図書館活動が「知」そのものとして捉えられることも、図書館員が創りだした「知」が注目されることもなった。

図書館の「知」には2種類ある。方法的な知(調べる方法)と、活動の成果の知(レファレンス記録)である。前者は後者を一般化したものとも言える。

レファ協の公共性の前に、レファレンスの公共性を考える。情報提供や調べかた案内といった直接サービスの技術や知識を発展させたものとして、課題解決型サービスがある。また、文献利用指導や読書案内などのレファレンスとは異なるサービスとしてとらえられているが、レファレンスに性格がとてもよく似ているサービスも存在する。特にこれらは学校図書館レファ協に参加することでよりいっそう、再考の必要性が浮き上がった。

レファレンスは公共サービスかどうか、という疑問が投げかけられる。つまり、レファレンスを直接サービスのみに依拠すると、受益性という課題が克服できない。私自身も思い当たる節があるが、ややもすると個人秘書(もどき)になりがちである。レファレンスに対する「これに税金使うの?」という反応や、有料でも提供できる(実際、海外では有料にする事例もあるらしい)という意識などはその表れであろう。レファレンスが公益性を創出するには、直接サービスだけでなく、課題解決型サービスのように社会的な利益につながったり、読書案内のように図書館の利用に結び付く側面も求められる。レファ協はサービスの結果そのものが価値を持ち、結果の二次利用により、さらに益を生む活動と理解されることができる。

ここでレファ協の公共性という視点と、レファレンスそのものの公共性という根本的な視点(疑問)が提示される。

まず前者について、このあとに一部のまとめをされた山崎氏からも「レファ協はオープンデータ足りうるのか?」という提起がされた。レファ協は図書館同士のつながり、利用者を越えて図書館の外へとウェブという仕組みのなかで情報ニーズをつなげている。大向先生も、まずはデータがオープンであること、技術を持っている人の声をきけることが大切とおっしゃっていた。

そして後者について、「調べる方法」を検討する。小田先生はフォーラムの中で何度も言及されていたが、教育的な視点はもっと考えられるべきであると。学校図書館の参加により、調べたあとはどうする?というところまで、求められるようになった。レファ協は調べものの目的、リテラシーマインドの形成という視点がレファレンスに持ち込まれた。このことからもある種の公共性が創出されたといえる。個人的には大学図書館にいると、それを何に使うか(どのくらいのボリュームのレポートなのか、いつまでの課題なのか、等々)を確認せずにはレファレンスはしにくいので、私にはピンと来ないのだが、かつてはレファレンスの目的を聞いてはいけなかった、らしい。

印象に残ったこと

  • レファ協により館種を越えてレファレンスを共有し、レファレンスそのものを再考するほどのインパクトがあるのは面白い

第二部での質問

  • レファ協に登録される利用者の抵抗感
    • あることは事実、一方で嬉しいというのもある
    • 個人情報の取り扱いはレファ協の中で基準が定められている
  • 調べた後にどのように支援するか?
    • (すみません。メモを落としました)
  • オープン化と参加率、どちらをより優先?
    • どちらも

第2部 パネルディスカッション「つながる図書館の情報サービス:「調べる方法」の公共性」

4人のパネリストから、それぞれの立場でレファ協について語っていただいた。ディスカッションの前に、コーディネータの山崎氏より3つのトピックが提起された。(1)利用者は図書館の利用者に限らない、(2)図書館の情報はみんながより利用しやすいように環境を整えるべき、(3)情報を囲い込まない。これらのトピック(問題提起)への回答としてレファ協であり、オープン化の促進である。

  • 片岡氏
    • 未参加の立場から、レファ協を授業で使った実感「レファ協は役立って面白い」
    • 卒業研究をする学校で高3と2年生に使ってもらった感想
      • 逆に卒業研究をするような高校生だからこそ楽しめた
      • 中学生はまだ難しい
    • 上級生はパスファインダーを作る=後輩への贈り物≒公共性を持つ
  • 中山氏


授業に役立つ学校図書館活用データベース

    • 2013年度よりレファ協に参加
      • 自前のデータベースとは異なる工夫
      • 学校内だけで使えるキーワードは使わない
      • 方法論を得て発信するという姿勢
      • レファレンス事例を加工して文章化する能力が必要
    • 学校図書館の取り組みを見える化する
      • 資料はどのように使われているのか
  • 岡崎氏
    • 参加大学図書館として
    • 山口大学ではレファ協を試行中
    • オープン化により図書館サービスを意識させない
    • レファ協が検索結果のトップに来ることも?!
    • 自分はレファレンスをここから勉強してきた
  • 余野氏
    • 参加公共図書館として
    • 主にビジネス支援サービスを担当
    • 自治体を越えて聞かれることは一緒だという気付きと、地方の独自性
    • 他の地域を聞かれて調べることも。自館にはなくても所蔵館やそのテーマで必要なが分かる
    • データベース化していつでもだれでも参照できることで、均一なサービスの提供
    • 一方でレファレンスは誰ものか?という疑問
      • レファレンス事例はオープンデータにするような公共性を持つのか

オープン化における課題は何か?という話題で、中山氏がおっしゃっていた、レファレンス事例は必ずしもQ&Aの形ではなく、授業計画やブックトークの中にも存在するという指摘が印象に残った。

感想

第二部で清教学園の高校生の卒業論文が回覧されていた。「駅前で配っても恥ずかしくないものを」と片岡氏は学生さんたちに冗談めかしておっしゃるそうだ。パラパラとめくっただけですが、参考文献リストから調査をした様子が伝わり、引用のルールが守られ、段組みや章立ても分かりやすくが書かれていた。ちなみに卒論は図書館の蔵書になるそうで、それがとてもいいなと思った。

帰りの電車で、もし大学図書館でレファレンス事例を公開するとしたらどんなものがバズるかというブレストをしてみた。たとえば、大学史に関すること(これは実際に何回か受けたことがある)、大学図書館のコレクション事例、有名な卒業生の著作リスト、市民講座をしている先生のブックリスト…等々。

最後に私がお世話になったレファレンス事例を紹介。


【図書館】ハードカバーの表紙がベタベタになるという現象が発生している。更に、表面の塗料が溶け出して(... | レファレンス協同データベース

これは助かりました。

余談。

休憩時間で「ご自由にお被りください」という、れはっちの被り物や、茶話会で職員さんからのれはっちクッキー差し入れなど、関西館のみなさまの、れはっち愛が素晴らしかったです。今さら知ったけれど、壁紙、ブックカバー、うちわ、ペーパークラフト、れはっち素材集といったこのページが充実してて面白かった。

レファレンス協同データベース事業 刊行物等

『アーカイブ立国宣言』を読んで。アーカイブについての関心ごと

久しぶりに、読んだ文献(本)のことを書いてみようと思う。

アーカイブ立国宣言

アーカイブ立国宣言

あえてのKindle版を紹介。価格も若干お安くなっている。事例にリンクが貼ってあったので便利だった。
この本はさまざまな分野での「アーカイブ」に携わっている著者から寄せられた事例紹介および対談、議論で構成されている。

ひとつのきっかけとして、2012年に設立された文化資源戦略会議からお話はスタートしている。この組織はの概要は以下のとおりである。

日本の豊富で多様な文化資源の整備と活用について、国家戦略的観点から論議し、政策提言することを目的に2012年に設立。各種文化資源専門家、研究者、行政担当者などの有志から成る官民横断的*1

文化資源戦略会議とメンバーの著書・編集したものがこの『アーカイブ立国宣言』である。

ここで何が宣言されているかは第一章で述べられている。

  1. 文化資源の蓄積と活用
  2. デジタルアーカイブの拡大に向けて


これらを踏まえて、デジタルアーカイブ振興政策の確立を提言している。

  1. 国立デジタルアーカイブ・センター(NDAC)の設立
  2. デジタルアーカイブを支える人材の育成
  3. 文化資源デジタルアーカイブのオープンデータ化
  4. 抜本的な孤児作品対策


なぜこれほどアーカイブが、デジタルアーカイブが注目されるようになったかにはいくつかの理由がある。グローバル化における日本の立ち位置、そして東京オリンピック、デジタル技術の革新と広がり、それらによる情報量・文化量の増加(にも関わらずデジタルでの保存・編集・活用の立ち遅れ)などがあげられている。

この本では具体的な目標として「国立デジタルアーカイブ・センター(NDAC)の設立」が掲げられたことからも分かるように、政策としてのデジタルアーカイブを推進している。この本が生まれた母胎をを考えると不思議ではない。「国内の諸デジタルアーカイブを支え、統合的利用を可能にする*2」ことを第一義的目的とする。その他に有すべき10大機能を定義する。

そして人材の育成、技術的側面の支援(オープンデータ化)、法制度の改革(孤児作品)が、NDACを支える形となっている。

このNDACのモデルになっているのは、Europeana米国デジタル図書館(Digital Public Library of America)などがあげられている。EUでは2003年にすでに法制度改革が始まっており、「公共セクター情報の再利用指令」の大希望な改正を採択し、オープンデータ義務を美術館・博物館・図書館・アーカイブ施設までに拡大している*3

第二章での鼎談では、デジタルアーカイブが盛んになった背景をより具体的に知ることができる。出発は東京オリンピック
そこから文化とはなにか、アーカイブとは、公共財とはなにかという議論が進む。そして

御厨:(前略)個人的な記録はどんどん蓄積されているのに、それらが相互につながっていないことが、日本のアーカイブの一番大きな問題点だと思うんです*4

オリンピックと一緒に東日本大震災のアーカイブに触れられている。個人の記録をなぜ政策としてアーカイブするの…?と思うが、政策としてアーカイブの必要な記録が個人の記録に無いとは限らないからだと思う。何を「政策としてのアーカイブとするのか」という問題は別にあるとは思うけれど。

もうひとつ「政策としてのアーカイブ」の必要性としては、孤児作品があげられる。著者が分からなければ、何もできないという現実はレファレンス現場でもよく出会う。その度に困っている。孤児作品対策は、共有と活用にもつながる話だ。いいかえれば、保存と同じくらい(もしかするとそれ以上に)問題なのは、「存在しても一部の限られた人以外は使えない文化財が多い」ということで、このような課題を解決する手段として、政策としてのデジタルアーカイブ、つまり「文化財特区」という提案がなされてる。

政策としてのアーカイブと聞いて、最近の事例としては神戸市の阪神・淡路大震災「1.17の記録」である。これは市が保有するデータ(阪神・淡路大震災の記録写真)をクリエイティブ・コモンズ・ライセンス 表示2.1 日本(CC BY 2.1 JP)のもとに提供されている *5

阪神・淡路大震災「1.17の記録」

第三章以降では具体的な事例が紹介されている。たとえば、東京国際マンガミュージアム、立命館大学ゲーム研究センター、311まるごとアーカイブス、日本脚本アーカイブズ推進コンソーシアム、東京国立近代美術館フィルムセンターNHKアーカイブス、地域雑誌「谷中・根津・千駄木」、小布施町立図書館「まちとしょテラソ」、札幌市中央図書館、青空図書館、京都服飾文化研究財団デジタルアーカイブ、Getty Images、Flickr、ニューヨーク公共図書館パフォーマンスアーツ図書館。

といっても、これらの取り組みは決して同じ方向を向いているわけではない、デジタルアーカイブは今後の課題だったり、特にデジタル部分については方向性がかなり異なっているように思えた。

事例を読みながら感じたことは、国立国会図書館への期待の高さだ。いくつかの事例紹介で言及されているし、実際に納本制度、「著作権法の一部を改正する法律」(平成24年6月27日公布、平成25年1月1日施行)、送信サービス、れきおん、近代デジタルライブラリー…などなど。そして一方で「それ以外の図書館には何が期待されているのだろう?」という疑問も。

いくつか事例をピックアップする。まちとしょテラソのアーカイブの例は、そこにある町立図書館だからこそ、できる事例なのかもしれな。本の中で「文化財を集めることだけがアーカイブではありません*6」という一文のとおり、「小布施人百選」など町の生き様を記録していった。もうひとつまちとしょテラソの箇所でいいなと思ったのは、「アーカイブをエンターテイメントにする」という箇所。「町の人同士が交流するのはもちろん、町の外に向かっても交流できる「道具としてのアーカイブ」*7

もうひとつ。音楽レコードについて。ここで強調されていたのはデジタル化されていないものにはリミットが迫ってきている、ということである。これは活用以前にこの世から消えてしまうという、より切迫した状態だ。「一度でもCD化されていたり、デジタル化されていれば、一般の好事家の方たちが勝手にアーカイブしてくださるじゃないか*8」。「勝手にアーカイブ」の是非はあるにせよ、このようにとらえることもできると面白いと思う。

個人的にNYPLのパフォーミングアーツ図書館がとても気になった。記録メディアが多岐に渡ること、それらがデジタル化された時の強みなどを読みながら考えていた。

また、ひとつの機関ではなくそのジャンルのアーカイブ事情も紹介された。日本のアニメ、音楽レコード、書籍…。その他、海外の事例(Amerian Memory、Gallica、Digital New Zealand、NDLサーチ、Deutsch Digital Bibliothek…)なども。

個人的には記録の集合体は、いつか誰かに使われるために存在していると思っている。それが実際に使われるかどうか、というよりも、使われる可能性をその中に宿しているものがアーカイブなのかなと。もちろん一つ一つの記録や文化財は、特徴や背景が異なる。ただ、ある程度のまとまった量になると、制度がなければ使うことはとても困難だ。そういった点で政策としてのアーカイブについて今後も注目していこうと思う。かつ自分にも無関係ではないのだろうなぁと。

同時にこれはデジタルアーカイブの一つの側面である。鼎談で少し触れられた公共財と私財の関係。個人の記録を共有化する仕組みにもう少し、踏み込んで知りたかった。単純に私財側の意識の問題ではないと思うから。

少し前になるがgaccoでこのような講義が開講されていた。

ga009: デジタルアーカイブのつくり方(渡邉 英徳)

ツバル・ビジュアライゼーションプロジェクトナガサキ・アーカイブヒロシマ・アーカイブ東日本大震災アーカイブなどを手がけた方の講義である。ここでのアーカイブは既存の記録をどのように見せるか、アーカイブの構築にどうやってどんな人を巻き込むか(記憶のコミュニティ)ということが重要視されている。アーカイブの別の側面。

講義の本筋は書籍としても刊行されている。

*1:文化資源戦略会議とは | 文化資源戦略会議 (acccessed 2015-01-11)

*2:『アーカイブ立国宣言』(Kindle版)No.177/4327

*3:同 No.261/4327

*4:同 No.521/4327

*5:利用方法・利用規約 (accessed 2015-01-11)

*6:同 No.2431/4327

*7:同 No.2530/4327

*8:同 No.3262/4327

『未来の図書館、はじめませんか?』刊行記念&書肆スウィートヒアアフター開店記念 「図書館×書店」の未来を探る著者トーク

日時:2014年12月14日(日)
場所:書肆スウィートヒアアフター
登壇:岡本真さん、宮崎勝歓さん、井上昌彦さん(聞き手)
『未来の図書館、はじめませんか?』刊行記念&書肆スウィートヒアアフター開店記念 「図書館×書店」の未来を探る著者トーク | Facebook


今年の12月にオープンしたばかりの書店、書肆スウィートヒアアフターで開催されたイベントには10人以上の参加者が集まった盛況ぶりだった。本日の主役はこちらの本。


主に公共図書館を中心に、図書館を新たに作るということ、図書館を育てるということを「市民と共に作って育てる」という姿勢を主張し続けている。お話の概要は下記の通り。

  • “街の図書館”という視座
    • 自治体の図書館づくりは仕事多い一方、若手中堅が薄い
    • それゆえノウハウ引き継がれてない
    • 他の事例を見ていないと分からないが視察の余裕が無い
    • 図書館コンサルタント(国内に5社あるらしい)に丸投げされることも(基本構想から!)
    • せっかく新しい図書館を作っても市民利用が芳しくないことも
      • 「我が町うの図書館」という意識が弱いためか
    • コンサルタントをどう使うか、どうしたいかを皆で考えて造る
  • 街の声をどう吸い上げるか
    • 小さい方がやりやすい側面も
    • 住民を信用してない?
    • ノウハウがない
    • 浮動票の人はワークショップじゃ集まらない。
      • 対策として年代を切る、ファミレスに行く、、ツイッター、本に対する気持ちを探るWebツール
  • 見知らぬ人と仲良くなる図書館?
    • 学校図書館ではある
    • 公共図書館は?
      • 学校はコミュニティが固定してるから特殊
      • 大人には起きにくい?
    • 展示では起こっている
    • 音にもっと寛容に。
  • 書店からの音について
    • 書店も公共空間
      • ふらっと入れる
      • 何時間いても買わなくても
      • 音に対して寛容
    • “普通の本屋”で出逢いは生まれない
      • 大きくなるほど趣味が一致しないかも
    • 出逢いを生み出す要因、場所、雰囲気づくり、角地、横のコミュニケーション(居酒屋のカウンターの横同士)、規模、共通の話題
    • 本を読んでいる姿を見せる、というのはある種のコミュニケーションのきっかけになる
  • 本をすすめるということ
    • 図書館から本をおすすめしにくい?
    • 個人に直接働きかけるのはタブーなのか?
    • 図書館でコミュニケーションは特殊な特別な場所でやるのか
  • 活字に触れる重要さ
    • 読むことを促進というアピールポイント
    • まちライブラリー事例
      • コミュニティづくりという目的→白馬村の事例
  • 書店と図書館
  • 人が出入りする場所の有無がその街の命運を握る?


コミュニティを本を通じて作る、それに図書館や書店が関わるということを考える1時間弱でした。個人的にここ最近で出会って印象的だったのは、神戸市立図書館のサッカー文庫とことば蔵@伊丹でのブクブク交換です。特に前者は賀川さんというカリスマの存在と彼を慕い支えるスタッフや人々の関係性が印象的でした。書店であれ、図書館であれ、それが存在している理由としてのコミュニティ(市民、学生、ステークホルダー…等など)に立ち返るのは基本なのだと改めて。

書肆スウィートヒアアフターで購入したのはこちら

PBL教育フォーラム2014「アクティブ・ラーニングにおける学習支援について考える-学習支援者としての学生の役割と、その可能性-」

日時:2014年11月08日(土)13:00~16:30
場所:同志社大学良心館104番教室
プログラム:
開会挨拶 真山 達志教授
趣旨説明 山田 和人教授

第1部<教員・学生による取組紹介>
 聖路加国際大学 Team based learning:五十嵐ゆかり准教授、堀井桃氏
 京都造形芸術大学 リアルワークプロジェクト:北村英之氏、吉田瑞希氏
 関西大学 ラーニング・アシスタント:三浦真琴教授、山本綾香氏
 同志社大学 プロジェクト科目 スチューデント・アシスタント:伊達立晶教授、木村貴幸氏

第2部<学生によるパネルディスカッション>
 聖路加国際大学京都造形芸術大学関西大学同志社大学
 コーディネーター
  山田 和人教授

簡単なメモ。教員でも教務担当でもない、(学生による学習支援に興味がある)職員視点のメモなので、多分にバイアスがかかっている点をご容赦ください。

その言葉を聞かない日は無いと言っても過言ではない「アクティブ・ラーニング」。その文脈の中で、学生が学生を支援する役割を果たすようになり、その役割の果たし方は様々だということと、学ぶことはそもそも楽しいことで、学問的足腰の強さが大切になるという点において、アクティブ・ラーニングは確かに従来型の授業とは異なる点も多いものの、全く特殊なものではないと感じた3時間でした。

同志社大学PBL推進センターは、「平成16年度より、「社会の教育力を大学に」をスローガンに掲げ、幅広い学びの保証を目的として、担当者公募制度を導入して、プロジェクト科目約25クラスを正課科目として全学部に提供」してきました。そして、この教育フォーラムも4回めを迎えたそうです。

また、この教育フォーラムは株式会社SIGERUが共催しています。

第1部<教員・学生による取組紹介>

聖路加国際大学

聖路加国際大学はTA/SA/LAのようなサポート制度はまだ導入されていませんが、TBL(Team Based Learning)を通じて、学生がお互いの学習をサポートするという仕組みを、授業を通じて作り上げた実績があります。

  • 五十嵐准教授(聖路加国際大学看護学部 周産期看護学
  • 聖路加国際大学は看護系大学で、指定校規則、演習が多いという点で他大学(学部)とかなり異なる
    • カリキュラムが過密
    • それゆえ、学年間の交流が少ない
    • プロフェッショナルな学習
  • 1996年よりPBL導入
  • 2012年よりTBL
  • 1クラスを6名程度のチームに分けて、自宅での予習を基礎に、チームでの学習へと応用する学習
  • 学習と実習への移行をスムーズにする
    • 臨床現場はチーム制
  • 教員はファシリテーター
    • 責任性をもたせる、フィードバック、チーム分けと取り扱い、学習と結束を高める仕掛け
      • チームで課題に取り組むために、予習に手抜きができない
      • チーム分けはそこに操作が無いことを示している(たとえば「1歳未満の子を抱っこしたことありますか」という質問への回答でチーム分けする等)
  • 学習支援者に関する制度はまだない
    • 今後に向けて、リソース、ロールモデル、サポーター、整える人としての「学習支援者」
    • 学習支援者にとって、学び直しやキャリア教育の効果も期待できる
  • 堀井桃氏(聖路加国際大学看護学部4年)
  • TBLの魅力は、積極性があがる高い学習効果と、責任感・達成感・団結力の体感と実習への繋がり
    • 予習課題(例:ウェスネス志向のアセスメントの視点を考えてみましょう)への取り組み
      • 自分で調べ、予習課題について知識を深めてから、講義に参加
      • 予習がとても大変!
      • チームの仲間が勉強する姿に刺激をうける
      • チームごとに得点(成績)を表示し、競争させるしかけ⇒「チームの為に」⇒チームの仲間は、学ぶ仲間であると同時に自分の学習を支え、励ます≒学習支援者⇒「実習もチームで乗り越えよう」
  • 学生が主体的に普段の学習にアクティブ・ラーニングを取り入れることで、知識の定着を促す
  • 学んだことを後輩に引き継ぐ
    • ビデオレターを制作
  • 大学院に進学予定。今後は学習支援者としてさらなる発展に貢献したい
京都造形芸術大学

「仕事」をキーワードにした「リアルワークプロジェクト」におけるTAについて、発表いただきました。大学と地域が連携したプロジェクト(仕事)に従事する学生を、かつての受講生だったTAがサポートする事例を紹介いただきました。

  • 北村英之氏(プロジェクトセンター 課長補佐)
  • 「芸術で社会を変える」
  • 芸大生と社会を結ぶ
  • プロジェクトセンター(2005~)
  • 基本姿勢は、プロジェクトは「仕事」
    • 業務委託契約と適正な対価
  • 2010年よりTA制度を導入
    • 最大の目的は「仕事」としての質の向上
    • そのための教職員のサポート
    • 教育・仕事のいずれかの側面に重点を置くかはプロジェクトによる
  • 授業内の出席管理やミーティング進行、技術指導、学生・教員とのコミュニケーションの他、クライアントとの連絡・渉外を受けもつ
  • TAは原則プロジェクをの経験者
    • 決定権は教員にあるが、慣習的に前年度TAが候補を指名する(8-9割、それで決定する)
  • レポートの提出が義務
    • 月ごとに活動時間を管理し、アルバイト扱いになる
  • 水平と垂直の関係に身を置く中間管理職
    • キックオフからゴールに導く(水平)
    • 学生と教職員を結ぶ(垂直)
  • 中間でいることは、二重でいること
    • 補助者であり、時に意見をいうことを我慢することもあるが、TA自身にも信念やポリシーがある。
    • TAミーティングで受講生だった経験をもとに、TA間や教職員とのコミュニケーションを生み出す
    • プロジェクト活動とそれを担う教職員の省察を促す⇒FD/SD的存在としてのTA
    • ○○以上○○未満
  • 吉田瑞希氏(芸術研究科芸術表現専攻総合造形領域修士1年 陶芸)
  • 近代産業遺産アート再生プロジェクト「まか通」に2010年より所属
    • 2013年度にTAとして活動
  • TAとしての行動計画
    • どんなチームにしたいか、そのために自分はどう振る舞うかという指針を立てて行動した
      • 4-9月はミーティング前に職員と打ち合わせをし、ミーティング中はリーダーやメンバーに確認をとる
      • 10月以降はリーダーと打ち合わせをし、ミーティング中は静観する
  • 鍾馗ワークショップ
    • 前日に場所変更やリーダーの体調不良、さらに自分の院試が重なる事件
    • 自分がいなくとも、主体的に学生が動き、ワークショップを成功させた
  • 東山カルタ大会
    • ミーティング当日に誰もアイディアを提出できなかった事件
    • 当時、受講生だった立場から、TAと学生との信頼関係が大切だと実感
  • 私たちにとってのTAとは
    • 伸ばす、人を動かす、ねじ、裏方、他者を知り己を知る…等など
関西大学

LA(Learning Assistant)を講義の中に取り入れている事例を紹介いただきました。三浦先生の資料によると、2014年度は72クラスに84名のLAが活動されているそうです。先生が担当されている「大学教育論〜大学の主人公はきみたちだ!」の様子を報告いただきました。

  • 山本綾香氏(文学部総合人文学科4年)
  • 最初にクイズを出しながら、「子供の視点」⇒「大人の視点」≒「学ぶ視点」⇒「教える視点」について問題提起
  • 1回生の時に憧れたLAの先輩
  • 2回生からLAとしてスタートするものの課題も多く
    • マニュアルがない
    • 何をすればいいかわからない
  • .学生FDサミットに参加
    • 自分は「何ができるか」
  • 3回生にはLAの勉強会の企画、フォーラムへの参加で自分に自信がついた
    • その反面、グループワークで思わず、答えを全部言ってしまったことがきっかけで、受講生から視点が離れていることを自覚
    • 再び、受講生の立場に戻ろうとする努力を重ねた
  • LAは学生が授業を通じて学ぶ楽しさにたどり着くサポートをする存在
  • 三浦真琴教授(教育推進学部・教育開発支援センター)
  • アクティブ・ラーニングは手法ではない
  • 問いを作る、問いを構造化する
  • 「学生とともに」の意図するところは「履修者以外の学生をつれてくる」という
  • 初年次教育において、「知的プロセス」の想像的・創造的体験を書くとする授業をわかりやすい「かたち」で展開するためのLA
  • 「大学教育論」の最後に流したビデオメッセージを視聴
    • 愉快な仲間たちという感じで楽しそうだった
同志社大学

2006年度から設置されたPBLを基本とする「プロジェクト科目」について、それをサポートするSA・TAの事例を発表いただきました。参考:
CiNii 論文 -  PBLの学びを最大値にするために : 同志社大学プロジェクト科目の場合に即して (特集 大学教育の質的転換に向けて : PBLの有効性について)

  • 伊達立晶教授(文学部 プロジェクト科目検討部会)
  • 全学共通教養科目で、毎年20クラス程度開講
    • 学内外からテーマを公募して決定
  • プロジェクト科目におけるSA/TAは学生であると同時に、教育に関わる一員
  • 1クラスに1名任用
    • SA/TA説明会の実施、SA/TA協議会の開催
    • 教員に対しては、授業運営サポート
      • CNS(キャンパスネットワークサービス)を使わず、LINEなどを連絡手段にしているため、進捗状況を定期的に報告
    • 学生に対しては、先輩アドバイザー
      • 履修生の授業への出席を促進
  • 学外との渉外担当(これは授業ですという姿勢を伝える)
  • 活動報告書の作成と提出
  • 木村貴幸氏(政策学部政策学科4年)
  • プロジェクト科目「音楽は心の薬」の受講生(2013)で、「伏見地域活性化プロジェクト」のSA(2014)
    • 2014年度プロジェクト科目春学期成果報告会では、前者は特別賞を、後者は優秀賞を受賞(すごい)
  • SAは自分で仕事を作らなくてはならない
  • 伏見プロジェクト
    • 伏見稲荷への観光客が少ない理由は?という問いを立てる
    • 仮説を検証する(英語表記の看板が少ないからでは?という仮説のもと、フィールドワーク)
    • 結論を導き、対策をたてる(海外の観光客にとって楽しみ方がわかりづらい→イベントを実施)
  • SAは俯瞰的な視点
    • 学生を見る視点:仲介、ファシリテーター、準備、情報提供、メンタルケア
    • 先生を見る視点も含まれる
    • ルーティン・ワークではない、先生や生徒のカラーによっても仕事がかわる
  • よくある課題
    • 時間が足りない(主体性の高まりが遅い)
    • イベント屋になる(学術的なとりくみになっているか、授業外のインプット不足)
  • 授業時間外の使い方
    • リサーチを個人作業、授業で全体作業
    • インプットが不足、SAの支援
    • チームの人間関係
    • 成果報告会で次年度のSAに引き継ぐ
  • 学術性を高めるインプット
    • プロジェクトを通じて座学の重要性が分かる
      • 資料集め、資料の読み込み
    • 人文系のプロジェクトはなんとなくでも出来てしまう側面がある
  • SAはサービスエリア

第2部<学生によるパネルディスカッション>

全文書き起こしは難しかったので、要点と印象に残った点をまとめます。

  • 受講生間にある熱量の差について
    • 学生間の関係性をよくするように立ち振る舞う(寄り添う)
    • 関わる期間が長いのか、短い(半期)のかにもよってできることが変わる
    • メンバーをTA的な存在に育てる
  • 科目への関心・愛着
    • メンバーへの愛着がプロジェクトへのモチベーションにつながることも
    • ミーティングを重ねるだけでは溝が広がることも
    • それ以外で補う(インフォーマルコミュニケーション)
    • 一人ではできない課題設定(チームでやろうという動機付け)
    • 自分の守備範囲外をフォローできないが、学生自身がたてた問いは学生は愛着を持つ
    • 関心や愛着の差を「違う視点を知る機会」を捉える。発言の少ないひとに質問をし、傾聴することでチームはよくなる
  • 支援者が「問いかける問い」とは。質問の質とタイミングの重要性に気がつくきっかけ
    • 何かを質問することは恥ずかしくない、と思わせる
    • 学生に問いかけて返答があり、さらにその学生が苦手を克服した時。そもそも「何が分からないかが分からない」
  • 議論の場とは「信頼関係」「安心」のこと
  • 支援者としての自身の振り返り・フィードバック
  • 支援者の経験がどう生きるか
    • 教員志望の学生にとってはプレFD
  • 何をどこまで関わるか、寄り添うだけでは足りない
  • 学習支援者は何と何をつなぐか
    • 大学と臨床現場(堀井氏)
    • メンバーとリーダー、メンバーと教員(吉田氏)
    • 学生と学び(山本氏)
    • 義務感と気持ち(木村氏)
  • 学習支援者の経験の汎用性
    • 反転授業に生かせる?”普通の授業”には活かせられない??
    • ノートの取り方
  • 学習支援者は支援者であり、学生であり、「評価者」
    • 支援者である学生の成長がその証
感じたこと

もう、すでに冒頭でも書いたが、学ぶことはそもそも楽しいことなんだと改めて思いました。発表されたみなさん、とてもキラキラ楽しそうでした。アクティブ・ラーニングは、それに気がつく授業のひとつのあり方なのかと思いました。これを自分に引きつけて考えると、初年次に「大学ってすごい!」という期待感を抱かせる一端を担えるようなしかけを、できたら面白いかなと。

また、学問的足腰の強さが大切になるということは、特に聖路加国際大学の堀井さんと、同志社大学の木村さんが直接、言及されていましたが、何か(プロジェクトなり何なり)を動かすには、その基礎知識が必要になり、それには授業外の自学が欠かせないという点です。図書館的には後者にコミットする割合が多いのかと。