klarer-himmel13's diary

(旧)図書館の中では走らないでください!から

『情報の評価とコレクション形成』(わかる!図書館情報学シリーズ第二巻)

長いタイトルになってしまったが、最近よんだ1冊。


ここ数年のうっすらした自分のテーマのひとつに、評価があった。図書館に関係すると、コレクションの評価になるのかもしれないけれど、もう少し広い視点から論じたものはないかなぁと思って読んだのが『情報の評価とコレクション形成』。9名の著者によるオムニバス講義のようになっている。

第1部 情報の評価
第1章 利用者の視点にもとづく情報と情報源の評価 齋藤泰則(明治大学
第2章 学術情報の評価 小野寺夏生(筑波大学名誉教授)
第3章 ウェブ情報源の評価 佐藤翔(同志社大学
第4章 蔵書の評価と資料選択 大場博幸(文教大学

前半のテーマが情報の評価である。1章ではまず、「情報要求を充足し評価されるとはどういう状態なのか?」という問いに対して、適合性、迅速性、利便性といった評価基準を細かく整理しなおすところから始まる。OCLCの図書館の情報源とウェブの情報源の比較調査などを引用しながら、利用者の視点からの評価基準について展開する。次に適合性について、問題解決において情報源を適合性で評価する際に、利用者の認識に応じて変化するということが指摘される。それを受けて、レファレンス(インタビュー)を取り上げ、利用者の不確定性を縮小する点を数量化した。ある情報要求Aとそれに対する情報B、Bに一定の評価をつけられる…ということだけではなく、インタビューにおいてAが変化することで、適合性もまた変化するということが示された。

www.oclc.org

2章では、情報を学術情報に絞り込み、評価の目的を(1)よりより研究成果を出すための支援(2)重要な情報の選別(3)研究管理(4)学術情報流の高度化・効率化の4つに分類した。学術情報の計量データを用いた評価の代表例として、論文数、被引用数/論文閲覧数、オルトメトリックスを取り上げそれぞれの特徴や課題などを整理した。

3章は内容ではなく媒体で切り分るというアプローチがされている。ウェブ情報源を信憑性(信頼性+専門性)、安定性、評判、依拠可能性の観点から評価基準を整理し、具体例としてウィキペディア、Q&Aサイト、SNSを取り上げた。つづく4章も媒体からのアプローチであり、蔵書評価と選書という物理体がテーマになる。まず、既存の評価基準であるチェックリスト法、蔵書新鮮度、入館者数と貸出数の概要と課題が紹介され、後半は資料選択について、主に公共図書館を具体例に理念について議論が展開される。

第2部 コレクション形成
第1章 コレクションとは 安井一徳(国立国会図書館
第2章 日本の図書館のコレクションの現状 大谷康晴(日本女子大学
第3章 学校図書館のコレクション形成 河西由美子(鶴見大学
第4章 大学図書館のコレクション 佐藤義則東北学院大学
第5章 文書資料と文書館・アーカイブズ 古賀崇(天理大学

後半はコレクション形成がテーマになっている。まず、1章で図書館コレクションの概論が展開される。電子環境下においてもコレクションは自明ではなくなるにせよ、コレクションが持つ役割が変わらないという指摘がされる。「コレクション「である」という静態的な認識から、コレクション「にする」という動態的で構成的なアプローチ(p.106)」がコレクションに起こり、ディスカバリーPDAなどがそれを支えるという。

2章では、カーリルとWebcat Plusを使った日本の図書館の所蔵状況を調べた大規模実態調査の報告である。章の最後に、所蔵調査を定期的に行うことで廃棄状況がわかると箇所を読んで、面白いなぁと思った。受入基準よりも廃棄基準が難しいというのを最近、感じている。

3章は学校図書館、4章は大学図書館のコレクションについて。3章はあまり読み込めていないが、これを読んではじめて「学校図書館図書標準」のことを知った。


4章の大学図書館については、電子資源を扱うことがもっとも多いためか、電子的コレクションにかなりを割いてある。前半は伝統的なアトキンソンのによる大学図書館が果たすべき機能(報知、資料、歴史、教育、書誌)を整理し、これらの5項目自体は変わらないものの、電子的コレクションの導入により、それぞれの機能のあり方は変化しているという。電子ジャーナル、ライセンス契約、ダークアーカイブ、オープンアクセス、電子書籍などの先には、図書館を超えたコレクションの組織化(HathiTrust、GoogleBooks、Internet Archive,、NDL図書館送信サービス、分担保存)が誕生し始め、図書館単独ではなく、集合的に課題を解決する努力が求められている。ちなみに本筋ではないが、電子的コレクションの強みの一つはログが取れるという点だと思う。コレクションが館内だけでなく、外部への仲介機能を含めたものへと変化するのであれば、統計やログデータのあり方や活用方法も変化するのだろうか?

最後は文書資料について。図書館で文書資料を扱う割合は小さいにせよ、それは貴重資料や特殊コレクションとして所蔵されていることは少なくない。文書資料が持つ様々な特徴、種別、整理における原則(出所ごとにまとめておく等)について端的に紹介されている。

「カリキュラムのキーワードを利用した分野別選書基準について―亜細亜大学図書館の試み」(人文会News No.121より)

ci.nii.ac.jp

半年前のものだけど、最近、紹介していただいて読んだもの。本文は公開されている。

人文会ニュース 121号 | 人文会公式サイト

著者の大石さんは、1996年に選書委員会に関わるようになり、1999年に教員からされた「選ぶ際のキーワードを教えて下さい」というエピソードをきっかけに選書や選書基準を考えるようになったという。

この関心が大きく動くようになったのは、2004年に分野別選書基準の作成をはじめたことだった。『ALA蔵書の管理と構成のためのガイドブック』(1995/原書は1994)のレベル表を参考にレベルをさだめ、カリキュラムをNDCに分類、そこからキーワードを切り出して、基準を作成したそうだ。カリキュラムの改訂、教員の交代、学部の新設などにあわせ、キーワード・レベルの見直しを行っている。

選書作業は学部ごとに6名が担当し、週1回会議を行って進められている。本文では作業順序や図書ごとの作業が細やかに説明されてた。大学の学部構成や図書館が本館1つという特徴もあるので、全てを真似することはできないが、(おそらく非言語されていたであろう)事例が紹介されているのが新鮮で、あらためて選書を考える機会となった。

最後に触れられていた「選書+除籍=選書基準」というのはとても腑に落ちた。除籍するときの方がより難しいなぁと最近は、考えている。





別の大学の話。まったく選書とは関係ない調べものをしていたときに、愛知淑徳大学図書館さんのホームページが目に止まった。

愛知淑徳大学図書館 Aichi Shukutoku University Library

f:id:klarer-himmel13:20160123165105j:plain

愛知淑徳大学図書館は、カリキュラムにそったコレクション(情報資源)を揃えて、学習・研究をサポートします。」という一文が潔くてかっこいい

情報組織化研究グループ月例研究会「東アジア地域における書誌コントロールの動向に関する国際フォーラム」

日時:2016年1月9日(土)
発表者:
夏 翠娟 氏(中国・上海図書館システム・ネットワークセンター)
「中国における書誌コントロールの現状:特にBIBFRAMEとLODに注目して」

朴 志英 氏(韓国・漢城大学知識情報学部)
「韓国における書誌コントロールの動向:RDA, BIBFRAME, LODを中心に」

渡邊 隆弘 氏(日本・帝塚山学院大学
「日本における書誌コントロールの動向:目録規則を中心に」

パネルディスカッション「東アジア地域における書誌コントロールの動向と今後」
パネリスト:夏 翠娟 氏,朴 志英 氏,渡邊 隆弘 氏
コメンテータ: 木村 麻衣子 氏(学習院女子大学

※追記あり

http://josoken.digick.jp/meeting/2016/201601forum_flyer.pdf

日中韓の3名から各国の書誌コントロールの現況を紹介いただいた。
各発表には、LOD、BIBFRAME、RDAが共通するキーワードとしてあげられている。発表の導入として、田窪さんからそれぞれの説明がされた。
LOD(Linked Open Data)とはデータのウェブ、と定義できる。普段、目にするインターネットサイトが「文書のデータ化」だとすると、LODはリンク関係の意味が分かる(=セマンティックリンク)ため、コンピュータで活用できる。
BIBFRAMEとは、RDF方式でマークアップされたものである。MARCフォーマットのマークアップ方式が現在の状況にそぐわない点も多い。FRBR化されているかは意見が別れるそうで、ある面では、BIBFRAMEはよく分からない子らしい…
RDA(Resource Description and Access)はAACR2の後継と言われている。あくまで規則ではないので、完全な意味では後継とは言えない。FRBRにもとづき、その影響は英語圏を越えてデファクトスタンダードになっている。

中国における書誌コントロールの現状:特にBIBFRAMEとLODに注目して
  • 中国の現状
    • 目録規則について、中国語文献は『中国文献目録規則』、西洋言語はAACR2とRDA
      • 『中国文献目録規則』はRDAを踏まえて改訂予定(詳細は未定)
      • CNMARCは公共・大学でも使用している
    • 媒体ごとに国家規格(GB/T~)
  • MARCについて
    • UNIMARCにもとづく
    • 1992年:CNMARC
    • 中国語文献はCNMARC、西洋言語についてはMARC21
  • 目録規則について
  • DCについて
    • デジタル図書館標準・規格建設プロジェクト(中国科学技術部重要プロジェクト=科技部重大项目)
    • CALIS国家図書館も上記の基準に倣う
  • RDAについて
  • インター年と時代の書誌コントロール
    • 機能と要件:FRBR,FRAD,FRSAR
    • メタデータ:DC
    • 目録規則:RDA
    • データフォーマット:BIBFRAME
    • 技術サポートとしてのUGC(User-Generated Contents),リンクデータ,モバイル,ビックデータ,クラウド
  • LODについて
    • 典拠データの研究>書誌データの研究
    • データ公開が目的ではなく、書誌データの構造化が主たる目的
  • BIBFRAMEについて
    • 中国での評価は様子見
    • RDAとの関係性が曖昧
    • CNMARCからBIBFRAMEに変換しにくい
      • CNMARCはUNIMARCにもとづいている。一方、アメリカなどの先行研究はMARC21からの変換がほとんどなので参照例が少ない
  • 上海図書館のとりくみ
韓国における書誌コントロールの動向:RDA, BIBFRAME, LODを中心に
日本における書誌コントロールの動向:目録規則を中心に
東アジア地域における書誌コントロールの動向と今後

木村さんから全体のまとめ。各国の発表の概要、RDAだけでは目録は作れない、LOD化する流れ、その一方でBIBFRAMEはまだこれから。そして、合理化・効率化の流れ=楽になることではない、考えること増えていくということが指摘された。

発表者同士の質疑応答は、中国語で質問→日本語に翻訳→日本語で回答(朴さんは日本語で発表されていた)→中国語に翻訳という、流れだったのでところどころ文意が取れていない箇所もあるので、ご容赦ください。

◯夏さんに寄せられた質問

  1. 上海図書館のコレクション全てがLOD化?→古典籍全てはLOD化されていない
  2. オントロジーと書誌コントロールとの関係は?→概念の相互関係を明確化、RDFXML・コード化(ここの文意が取れず…)


◯朴さんに寄せられた質問

  1. 2011年にLOD化したとき(BIBFRAME発表前)のモデルはFRBRにもとづいているか?→インスタンス(manifestation)にもとづいている(ここの文意が取れず…)
  2. 典拠コントロールは同期されている?→書誌と典拠データは手作業
  3. 典拠データ・同姓同名はどうのように同定しているか?→生没年、漢字、ハングル、時代、父母名、職名、贈り名(古典籍は著者コントロールは限界があるのかもしれない…)
  4. オントロジーと書誌コントロールとの関係は?→全体の枠組み(構造化)と関係、スキーマとほぼ同義(ここの文意が取れず…)


オントロジーについて、質問をされたのは渡邊先生だったのだが、中韓の発表ではオントロジーという用語が登場し、日本では書誌コントロールの文脈ではあまり聞かない。フレームを、スキーマを作ることとどのような関連があるのか?という内容だった。お二人の回答を受けて、エレメントのRDA化とオントロジーは通じているのではないか、エレメントの定義をコンピュータに理解させているのではという補足があった。

木村さんから、RDAとBIBFRAMEの課題は典拠データの不備であり、特に統一書名典拠が課題になるという指摘があった。渡邊先生からは、日中韓に共通する課題として古典籍を指摘し、古典籍はRDAでカバーできるのかという疑問が出された。FRBR化するには統一タイトルが必要。現行は日中韓とも本タイトルを統一タイトルとみなしていることが多い。夏さんから中国で統一タイトルの典拠作成を進めているとの紹介があった。フロアから、国文学研究資料館の事例が紹介され、古典籍は突き詰めると「昔のものはよく分からない」となってしまうらしい。国文学研究資料館では統一書名タイトルを作って公開しているが、それには専門家に確認するが伴うことも。

フロアからの質問に、日中韓でLODを通じて共有できないか、図書館コミュニティのみならず博物館や研究者などの図書館外で活用できる可能性について、言及があった。その他に古賀先生から、著者名典拠についてORCIDのような研究者でコントロールする可能性について質問があった。夏さんからCNKIで著者情報とh-indexの連携、百度学術北京大学で固有識別子を与える試みもあるとの回答があった。


質疑応答のなかで「この大量のデータで何をしたい?」という問いかけがあった。夏さんからEric Millerの「From MARC to BIBFRAME / What could we loss? What would we get?」という言葉が紹介された。

Article Sharingについて(ユサコニュース 第267号 論文共有をめぐる出版者の動向より)

ユサコニュース(11月)を(いまさら)読みながら、面白い特集だと思った。

www.usaco.co.jp


ビッグディールが揺らぎ始めたり、インターネットインフラの益々の強化だったり、(デバイス等の)共有化・個別化が進んだり、色々な要因が影響しているとは思うけど、研究者の間の論文共有。先日、こんなニュースを聞いたばかり

wired.jp

ユサコニュースで取り上げられていたのは、このような動きを受けて、国際STM出版社協会がどのようなことをしているかというものだった。

国際STM出版社協

www.stm-assoc.org

曰く、論文共有に研究者がよく利用しているプラットフォーム(SCNs:Scholarly Collaboration Network)と)は、Academia.edu、ResearchGate、Mendeley。Mendeleyは文献管理ソフトじゃ?とおもいきや、それ以外(以上の?)活躍を果たしているらしい。これは当初から研究者のSNS的だと言われていたことからも伺える。

www.youtube.com


私自身が肌身で実感したのは3年位前だったように記憶している。「分野にもよるが分母の大きいところだと、検索エンジンとしても使える。PDFもダウンロードできる」というような使い方を当時の院生から教えてもらった。

文献管理ソフトと論文共有の動きは、Mendeleyだけではない。

www.natureasia.com

ユサコニュースの続き。この国際STM出版社協会で発表された声明は下記の通り。

www.stm-assoc.org

これは2015年の2月に、SCNsワーキンググループが、SCNsでの論文共有における自主的な原則案を公開しコメントを募集した上で、同年8月に改訂版が発表されたもの。

国際STM出版社協会、学術的なネットワークにおける自主的な論文共有の原則案を公開し、意見を募集 | カレントアウェアネス・ポータル


そこには、SCNsワーキンググループ議長のFrederick Dylla氏(AIP)によるスライドが公開されている。


Voluntary principles for article sharing on scholarly collaboration networks

そこで、図書館への言及があった。ユサコニュース(翻訳済み)をそのまま引用すると、「出版者と図書館は提供サービスの利用者の傾向や提供サービスの質評価のためにもCOUNTERなどの標準規格で共有のタイプや総量を把握できるようにすべき。」とある。

思ったことは2つ。1.アーカイブや所有(契約含め)への言及がない、2.利用統計を活用する可能性、である。
1つめは研究者による論文共有についての指針なので、まぁそうなのかもしれない。2つめは各図書館が持っているであろう利用統計にはどんな使い方があるのだろうか、ということ。

利用統計の活用でいちばんに思い浮かぶのは、契約の時である。これについて、今年度のNII実務研修に参加された浅野ゆう子さん(筑波大学)のテーマ「電子リソースの利用統計の収集・管理および活用方法に関する調査」が近いなぁと思って拝見させていただいた。

教育研修事業 - 国立情報学研究所実務研修 - 過去の記録 - 平成27年度

その他にあるとしたら何だろう?機関リポジトリはダウンロードランキングなどを発表されているところも多い。電子リソースではないけれど貸出ランキングもある。各機関の利用統計をオープンにする日も来るのだろうか?それをオープンデータ化する日も来るのだろうか?

閑話休題

Elsevierが出版者版を機関リポジトリに掲載することが認めたり、
www.elsevier.com

WileyがArticle Sharing Policyを発表したり、
Article Sharing Policy - Wiley Online Library

上記のNatureの動きだったり、これからどんどん出版社の動きも見えてくるのかなと思った。

2016.1.9追記

コメントで「STMの動きがElsevierの新ポリシーの引き金だった」をいただいた。

www.elsevier.com

自分用にメモ

情報組織化研究グループ月例研究会「イタリアの目録規則REICATの概要」

日時:2015年10月31日(土) 14:30~17:00
発表者 :石田康博氏(名古屋大学附属図書館)

しばらくブログを書いていなかったので、リハビリ代わりに参加してきました。
2009年にFRBRを適用させた初の目録規則として有名な、REICAT(レイカット)について、イタリアの図書館事情とともにご紹介いただきました。

イタリアの図書館

特徴的な点は、50以上の国立図書館があるという点。その内訳は3種類に分類される。

  • biblioteche nazionali centrali
  • biblioteche nazionali
    • 7館
  • biblioteche statali
    • 約50館
    • 「nazionali」と「statali」という違いがある
    • 大学の所属を離れて、文化省の直轄の大学図書館もある
    • イタリアの大学は街中に学部が点在し「キャンパス」がないため、中央図書館はがなく、学部図書館が中心だそうだ

この他に、自治体が設置する図書館が存在します。石田氏は趣味でイタリアに行くことが多く、旅と一緒に図書館を訪れてきた積み重ねが、今回の発表の元になっているそうです。

イタリアの目録規則

ここから本題に入ります。まず、目録規則の歴史から紹介されました。

  • 18-19世紀:詳細は不明であるが、フィレンチェ国立中央図書館の規則が統一後のイタリア最初の規則
    • 著者基本記入方式
  • ICCU(Istituto Centrale per il Catalogo Unico):1956年
    • 目録規則の作成機関+書誌情報中央研究所

www.iccu.sbn.it

  • RICA(Regole italiane di catalogazione per autori):1976年(その後改訂あり)

www.amazon.es

  • SBN(Servizio bibliotecario nazionale)
    • イタリアの総合目録+書誌ユーティリティ
    • マニュアル(978-8871070360)

www.sbn.it

  • REICAT(Regole italiane di catalogazione):2009年

http://www.iccu.sbn.it/opencms/export/sites/iccu/documenti/2015/REICAT-giugno2009.pdf

  • ISBDイタリア語訳(978-8878120075):2009年
  • FRBRのイタリア語訳:2000年

www.amazon.it

  • FRADのイタリア語訳:2010年

www.amazon.it

  • RDAのイタリア語訳開始:2014年
  • イタリアのライブラリアン御用達のハンドブック

www.amazon.ca

  • パンフレット、ちらしの目録規則も存在する

REICAT

世界初のFRBRにもとづく目録規則です。中をみると3部構成で、例示がかなり細かく掲載されていました。全650ページ以上にのぼる大作ですので、全体をざっと概観します。特に第二部以降はFRBRを倣っているように感じました。

  1. descrizione bibliografica e informazioni sull’esempla(書誌記述および個別資料の情報)
  2. Opere e espressioni(著作と表現形)
  3. Responsabilità*1
第一部
  1. 書誌記述の目的と書式
  2. 書誌記述の一般規則
  3. 情報源
  4. 記述のエリアとエレメント
  5. 分冊出版物の記述および分出記述
  6. 非出版文書の記述
  7. 個別資料に関する記述
  • 書誌を作成する単位に対して、何を記述するのかを例示している
  • 資料種別も記述しうる全ての種別に対して記述規則をまとめている(半分近くが一部に割かれている)
第二部
  1. 著作と表現形
  2. 統一タイトル
  3. 同一著作n表現形
  4. 過去に存在した著作に関連する新たな著作
  5. 出版物中に含まれる著作および統一タイトルの適用
  6. 他のタイトルからのアクセス
  • 第二部では、著作-表現形-体現形-個別資料の詳細な説明
  • 統一タイトルには識別子がつけられる*2
    • 例:Codice di procedura penae<1931>←この部分
  • 多言語の版が存在する場合は、イタリア語であるという識別子は省略
    • 他の国ではどうなのだろ?これは一般的?
    • 従来よりも規定が細かく、無著者名古典、法令、音楽作品などに限定せずに全著作に拡大

石田氏は音楽に関心があるとこことで、音楽作品の目録を例示されていました。印象的だったのは、歌曲の標目として、イタリアでは伝統的に作詞者を標目にしているそうです。これはISBDやAACRとは異なっていますが、RDAでは作詞者を標目にしているそうで、ここに来て偶然?にも揃ったそうです。

第三部
  1. Responsibilityの関連
  2. 個人名の統一標目形
  3. 団体名の統一標目形
  4. 著作のResponsibility
  5. 特定の表現形のResponsibility
  6. 出版および制作のResponsibility
  7. 個別資料のResponsibility
  • 著作/表現形/体現形/個別資料のそれぞれのレベルに対してResponsibilityが存在する
    • 著作に対する原作者、表現形に対する翻訳者、体現形に対する出版者、個別資料に対する所蔵館…等々
  • Responsibilityには2つのタイプに分かれ、著者のResponsibilityとその他のResponsibilityは区別される
  • 標目のタイプと対応した、3つの段階が存在する
    • 関連して、標目の選定にも言及されている(15章)

感想とまとめ

  • FRBRはあくまで考え方(機能要件)なので、それが実現している規則ついてお話を聞いたのははじめてだった
  • 発表の途中で、イタリアのカード目録の写真を見せていただいたが、「(こういうシステマティックな整理は)アングロサクソン系の方が得意だと思います」と言われていた。お国柄って目録に現れるのか
  • 石田氏が収集されたイタリアの目録に関する図書を十数冊ほど見せていただいた
    • どこかに譲りたいとおっしゃっており、参加者との譲り先の候補話が面白かった
  • REICATは、具体例の豊富だった。途中で属性を説明するために棒人間がフル活用されていた図が何ページも続いて可愛かった

*1:この翻訳がわからないとのこと。本家FRBRにも「responsibility」のような単語は確認できず。発表中に別の方から、著作/表現形/体現形/個別資料に責任を持つ第2グループの実体ではということでした。

*2:ここのメモに、「RDAにおける著作のアクセスポイント=統一タイトル+責任表示」というメモをしました。しかし、何のことかさっぱりだったので、とりあえずここに書いておきます。

「オープンアクセス,インパクトファクター,XML-Nagoya J Med Sci編集の現場から-」(『情報の科学と技術』65(8)より)

読んでみて面白かったので簡単にメモしておく。


蒲生英博「オープンアクセス,インパクトファクター,XML-Nagoya J Med Sci編集の現場から-」『情報の科学と技術』65(8)
2015. 08 特集= ISOと標準化 | 情報科学技術協会 INFOSTA


名古屋大学の医学分館に所属されている蒲生さんによる、名大の医学部で発行している学術雑誌(あえて紀要、ではなく)の編集作業について、プラットフォーム作りを中心に紹介されている。

Nagoya Journal of Medical Science

独自のホームページを作成し、OAとして公開されている。現在のところ、機関リポジトリと両方に登録されているそうだ。統計はどのように取得されているのだろう?

『Nagoya J Med Sci』の特徴の一つは、IF(インパクト・ファクター)。それによるとWoSに3年以上収録される必要があるという。その他にも、申請が受理されるために、投稿規定を整え、EndNote Output Styleを用意、DOAJへの登録などを経て、審査を通り、受理された。そして2013年より、IFがリリースされている。

トムソンには、年間2,000点近くが申請され、そのうち受理されるのは1割程度だそうだ。

ジャーナル収録基準 - トムソン・ロイター

もう一つの特徴であるXMLの作成に関連して、面白いなぁと思ったのは、PubMed更新について。もともとOA化される前からPubMedへの収録は行われていた。そしてOA化された後も、印刷物のときと同様にNDLにコピーして送り、NMLが索引化している。XMLを作成することで、結果としてPubMedへの登録も早くなる(PMC→PubMedへデータ更新を行うため)というメリットをもたらした。雑誌の発行後の3-4週間後にはPubMedに掲載されるようになったらしい。

話は前後するが、PMCへの登録はXMLがマストらしい。

Add a Journal to PMC

3. PMC's Technical Requirements

Required Files

A journal must provide PMC with the full text of articles in an XML (eXtensible Markup Language) format that conforms to an acceptable journal article DTD (Document Type Definition). PMC does not accept articles in HTML format.


論文の最後でも言及されているが、今後の課題としてDOIを他の紀要論文への付与という点も言及されていた。
たとえば、静岡大学さんの発表資料を読んでいると「2大学の機関リポジトリで重複して公開」している『教科開発学論集』は、ウェブサイトとIRで公開されている『Nagoya J Med Sci』と似ているのかなぁと思ったり。

静岡大学学術リポジトリのDOI付与
http://www.nii.ac.jp/irp/event/2014/OA_summit/docs/1_04.pdf

Student CASPワークショップに参加してきた

第十回Student CASPワークショップ
日時:2015年6月21日
場所:神戸薬科大学
使用論文:Withdrawal of inhaled glucocorticoids and exacerbations of COPD. New England Journal of Medicine, 371(14), 1285-1294.

CASP(Critical Appraisal Skills Programme)の目的は、医療や保健の現場で判断をする職種に就いている人だけでなく、その判断に関わるすべての人が、その根拠をわきまえた上で判断し行動できるように支援することです。 CASPは英国オックスフォードでの市民のための健康支援活動(PHRU: Public Health Resource Unit)の一部として始まりました。この理念に基づく行動を広く提供しています。このCASPの理念と活動を国際的に広げることを目的にしたネットワークがCASP internationalです。CASP JapanはCASP internationalの支援を受けながら日本を対象に活動しています。 (http://casp-japan.com/より)

CASPワークショップでは、その手法や形式に一定の形があって、どんな初心者であっても、どんな背景を持った方でも、楽しめる形になっています。実際に英国で開業医や病院の医師単位から、訪問看護婦、一般市民、図書館司書、助産婦、更にこれらの複数の職種からなるチームそのものを対象にしてワークショップが全国各地で開かれています。(当日資料より)

EDMと図書館(職員)の関わりを知りたくて、誘っていただいたのをきっかけに、おじゃましてきました。ワークショップの内容は後日、報告書がまとめられるので、どんな準備をしたのか、どのように感じたかをメモ。

5月下旬:参加を決める
5月下旬:使用論文の連絡を受け、とりあえず印刷する。アブストラクトだけに目を通す
6月上旬:チェックシート(これに沿って議論していく。論文を読む目安)
6月2週目:チェックシートにしたがって本文を読み始める(全てはできなかった…)

こんな感じ。ど素人なので、補助資料として以下のものを紹介してもらった。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン

COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン

当日、参考になる情報源をいくつか紹介いただいた。
医学書院/週刊医学界新聞(第2971号 2012年03月26日)

GOLD - the Global initiative for chronic Obstructive Lung Disease


A randomised cross-over trial investigating the ease of use and preference of two dry powder inhalers in patients with asthma or chronic obstructive pulmonary disease. Expert opinion on drug delivery, 10(9), 1171-1178.

同じ班には同業の先輩の他、チューター、薬剤師、薬学部の学生さんがいらした。EBM概論、RCT(今回扱った試験名)、呼吸器疾患のについてのレクチャーをはさみつつ、半日かけて1本の論文を検証しながら読み、発表、他班の解釈を聞くというセットを3回繰り返し。

EBMのステップに沿って検討する。
step 1:疑問(問題)の定式化
step 2:情報収集
step 3:情報の批判的吟味
step 4:情報の患者への適用
step 5:step 1~step 4のフィードバック
ワークショップでは、ステップ2をショートカットした5つのステップをグループワークで取り組んだ。

図書館とEBM、私が前もって読んだのはこの辺り。

ci.nii.ac.jp
EBM・診療ガイドライン
EBM実践支援ツール|奈良県立医科大学附属図書館
日本医学図書館協会の診療ガイドライン作成支援事業に参加して(奈良県立医科大学附属図書館. 鈴木 孝明)

CiNiiの最古記事はci.nii.ac.jp

15年前の記事。医学図書館歴2ヶ月が、このようにワークショップにふらっと参加させてもらえるのは、この積み重ねの上に成り立っているのと、そして医学という学問の裾野の広さなのかなぁと。

ワークショップは全部で8時間弱くらい。未知の世界の話を聞いて、自分なりに理解するのは、楽しいと同時にけっこうハードだった。専門家のとお話をしっかり聞くというのは、物凄く訓練になった。たぶん、異なるバックグラウンドを持つ人間がどうやって連携するのか、というのをシュミレートする場なのだと感じた。チューターの先生や、他の参加者もかみ砕いてお話いただいてありがたかった。

コーディネーターの高垣先生とちょっとだけお話させていただいた。仕事の現場で何ができるかなぁとか、どんなおしながき(我々が何者で何ができるのか)を提示できるのかなぁという思いが横切った。